理学部二号館の置物に関するレポート

吉田 大和(生物科学専攻 准教授)

 

理学部二号館には不思議な置物があるのをご存じだろうか。謂れのある珍品かとも思えるが,その割にはこれらの正体を知っている人は殆どいないという謎の置物である。今回はこれらの置物の正体を調査した結果を報告する。

三階・四階の踊り場から説明する。ここには一対のモアイ像(AとB)がある。このモアイ像,良く見ると発泡スチロールに塗装して作成された偽物精巧なオブジェであることが分かる。この謎の和製モアイ像に関して石田貴文教授に伺ったところ,由来が判明した。これらは以前,人類学会大会が開催された際に作成・展示されたもので,その後なぜか二号館へ移設されたらしい。

  二号館の階段踊り場の置物たち

二階・三階の踊り場の左側には,古そうな石造彫刻(C)がある。モアイの後に見ると疑ってしまうが,こちらは本物である。きちんとしたラベル(D)が付与されており,福岡県の岩戸山古墳から出土したものであることが分かる。同古墳からは人物や動物をモチーフとした石人石馬と総称される石造彫刻が多数発見されており,重要文化財に指定されているものもあるようだ。ちなみに彫刻の下には何故か小銭が落ちている(お賽銭?)。

続いて一階・二階の踊り場に移ると,左側には立派なウミガメの剥製(E)がある。入江直樹准教授が事情を知っているとの情報を得たため,伺ってみたところ正体が判明した。このウミガメの剥製は,ある学生のお祖父様が昔から所蔵していたものらしい。しかし今となってはワシントン条約に該当する品となってしまい扱いに困っていたところ,同学生の指導教員が入江先生と知り合いで,また 入江先生が研究の過程で同種のアオウミガメのゲノム解読を行っていたこともあり,東京大学における教育と学術研究のために寄贈されたようだ。ちなみにカメは進化発生学の点からみて非常に興味深い動物とのこと。

一階・二階の踊り場の右側を見ると,扉の奥に古そうな植物の標本(FとG)が置かれている。ラベルには木生シダの一種である「ヘゴ」と記載されており,採集地は小笠原母島とある。今回,もっとも調査が難航したのがこのヘゴの標本であり,詳細は現在も不明である。しかし寺島一郎教授や種子田春彦助教,さらには東京大学附属植物園長を務められた邑田仁名誉教授にも調べていただいた結果,興味深い事実が分かった。東京大学における小笠原諸島の植物研究は古く大学設立時まで遡り,当時採集された標本は現在も本学に収蔵されているとのこと。戦前は小笠原で学生実習も行っていたらしく,多くの学生が小笠原のヘゴをはじめとする植生に学んでいたようだ。現在のヘゴの標本は,こうした中で採集されたものである可能性は高い。

最後に一階・地下の踊り場の象の置物(HとI)であるが 残り字数が無いので略すが,ある大学院生がタイ旅行のお土産を置いた,との情報を得たが真偽不明。情報求ム。

以上,二号館を訪れた際はぜひご覧ください(ご協力 いただいた先生方には心より感謝申し上げます)。

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理学部ニュース2020年3月号掲載

 

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