南の島から発見された新種の光るクモヒトデ

岡西 政典(臨海実験所 特任助教)

 


クモヒトデ類は,ウニ,ナマコ,ヒトデを含む棘皮動物門のいちグループであり,腕が細長いヒ トデのような形をしている。その形や,クモ「ヒトデ」という名前のせいか,よく「クモヒトデはヒトデのいちグループですか?」と聞かれることがあるが,ヒトデとクモヒトデは「綱(門のひとつ下の階級)」のレベルで分けられる別の分類群である。われわれに近いところに置き換えてみると,魚綱と両生綱くらいの違いに相当する。


図:ドウクツヒカリクモヒトデ Ophiopsila xmasilluminans
A: 生時の反口側の画像。B:自然状況下の画像。C:自然状況下で腕の一部を光らせている様子。(写真:藤田喜久(沖縄県立芸術大学))

星形で,一見すると似ているヒトデ綱とクモヒトデ綱だが,実は腕の構造がまったく異なり,星形の真んなかにある口から腕の正中線上に伸びる溝があればヒトデ,なければクモヒトデである。 クモヒトデはその細長い腕を器用に動かすことで,岩やサンゴの隙間,砂泥の中などに上手く隠れ住むことで,世界中のあらゆる海域に進出している。そのため棘皮動物の綱の中ではもっとも種数が多く,成功したグループであると言われており,生態系における重要な位置を占めている。しかしながら一般的には知名度が低く,研究者が少ないため,分類などの基礎的な部分も多くが不明瞭で,現在でも新種の発見が後を絶たない。

今回われわれが発見した新種のクモヒトデは,オーストラリアとシンガポールの国際研究チームが行った,オーストラリア領クリスマス島の生物相調査(2010-2012年)によって,2011年に3月に,クリスマス島北部の海底洞窟「Thunderdome cave」の水深10mより発見された。本調査に参加し,現地で本種を観察・採集した共著者の藤田喜久准教授(沖縄県立芸術大学)と,2017年にその標本を受け取った筆者によって,本種がOphiopsila属のいかなる種とも形態が異なる未記載種であることが認められた。

本種は洞窟内の奥深くの,塩分濃度や水温の低いアンキアラインとよばれる環境でのみ発見された事から,その生息域は洞窟奥部に限られる事が強く示唆された。本種は同属の他の種にくらべて腕が長く,これは,餌に乏しい洞窟内で効率よく餌を探すための適応ではないかと考えられた。また,藤田准教授によって本種の発光が映像に収められたが,発光生物学の専門家である共著者の大場裕一教授(中部大学)によれば,これは洞窟性種の発光現象としては世界で初めての記録である事が認められた。その具体的な役割は不明であるが,他の発光生物の例から,敵に襲われた時に光ることで,より大きな敵を呼び寄せる光のSOSであることなどが考えられた。われわれはこのような特徴を備える本種を,クリスマス島で採集された発光生物であることに因み,2019年にOphiopsila xmasilluminans(和名:ドウクツヒカリ クモヒトデ)として新種記載した。

本研究成果は,Okanishi et al ., Raffles Bulletin of Zoology 67, 421(2019) に掲載された。本種の発光の様子は以下の動画から視聴できる。

(2016年6月20日プレスリリース)

 

学部生に伝える研究最前線>

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加