多様性のすすめ


藤井 通子
(天文学専攻 准教授)

ライデン大学での所属研究室メンバーの集合写真。筆者は前列右から3番目。メンバーの国籍は,オランダ,日本,イタリア,ニュージーランド,アメリカ,コロンビア,レバノンと多岐にわたる。  

私は常々,東大に足りないものは多様性ではないかと思っている。(私自身,大学院まで過ごしたところへ出戻って,多様性を減らしているわけではあるが。)

私は学位取得後しばらく,研究員としてオランダのライデン大学(Leiden Univ.)にいた。オランダの天文学分野では,学位取得後すぐのオランダ人研究員(ポスドク)を雇わないことを徹底しているため,研究員は外国人ばかりになる。また,博士課程の学生の半分くらいが外国人であったため, そこにいる人々は多様性に富んでいた。研究員や学生における女性の割合も日本とくらべると高く,3割程度であった。いっぽう,ファカルティメンバーにおける女性の割合は依然低く,約30人中たった2人ではあった。

私がいた当時(2010年~2013年)は,ちょうどシリア情勢が不安定になってきた頃で,レバノン人の学生から,帰省したけれど夜間は外出禁止令が出ていたという話を聞いたり,学位を取った後,自国に戻って研究を続けることはありえないイラン人の学生の話を聞いたりすると,日本の大学院で日本人ばかりの環境にいた自分達は,いかに狭い世界で生きていたかを思い知らされたのだった。そういった経験から,東大にもっと多様なバックグラウンドをもつ学生がいたら,大学は学生にとってより多くを学べる場になると思うだが,留学生は以前とくらべて大幅に増えてはいるものの,道半ばだ。外国人研究員に関しては,受入教員自らが行わなければならないビザ申請の書類などが,教員が外国人研究員を受け入れるモチベーションを下げていると思う。たとえばライデン大学では,理学部のHuman Resources部門がビザ関係をすべて管理していた。そのような環境整備も外国人の多い環境を支えているのだろう。

女子学生の割合に話を移すと,東大の学部生における女子の割合は2割前後のまま,ここ約20年横ばいである。いっぽう,女性教員の数は着実に増えており,天文学専攻では私が着任した2016年当初,私が唯一の女性教員だったが,2019年の現在では任期なしの女性教員が3人になった。 私自身は,自分が学生の時に女性教員がいないことを全く気にしていなかったが,私が着任した時にひじょうに喜んでくれた女子学生がおり,自身の果たすべき役割とここにいる意味を実感したのだった。

女子学生を増やすために,理学系研究科は毎年「女子中高生の未来」という理系進学促進イベントを開催しており, 私も二度関わった。その時は,その効果に半信半疑だったのだが,今夏のUTRIPで,このイベントをきっかけに東大を目指した(結果,落ちてしまったのでアメリカの大学に通っている)という女子学生に出会った。われわれの努力は決して無駄ではなかったのだ。このような出来事はなかなか皆の目に見える形で発表される機会がないので,ここに記しておく。

多様性を受け入れるには,多大なコストがかかる。同質なバックグラウンドをもつ人間の集まりは御しやすいだろう。しかし,多様性を受け入れたその先に,真の発展があると私は思っている。

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理学部ニュース2019年11月号掲載



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