チャールズ・ダーウィン
「種の起源」初版本

On the Origin of Species

塚谷 裕一(生物科学専攻 教授)


Charles Robert Darwin(著)
On the Origin of Species by Means of Natural Selection, or the Preservation of Favoured Races in the Struggle for Life
(1859年初版)

言わずと知れた,進化論の記念すべき論考である。本のタイトルがThe Origin of Speciesではなく,On the Origin of Speciesなのは,これが初版本だからであり,第6版からはOnが削られている。このとき同時に第7章が加えられ,ダーウィンはこれをもって改訂の最終版とした。そのため多くの国で翻訳された「種の起源」の底本は,第6版である。機会があればこの初版本と巷の和訳本とをくらべてみると,面白いかもしれない。

以上の経緯からも察せられるとおり,「種の起源」は何度も版を重ねて出版されるほど,人気のあった本であった。進化論は発表当初,キリスト教の教義とそぐわないとして多くの反発を呼んだ,と一般には信じられている。当時の風刺漫画を思い起こす方も多いだろう。が,実際には出版と共に多くの読者が飛びつき,話題となったようだ。聖職者を除けば,当時の読者層はそれほど因習に囚われていなかったのかもしれない。

実際この初版本も,1859年に1,250部が出版されたと伝えられているが,たちまち売り切れ,すぐに増刷を重ねた経緯がある。その初刷りのうち二百数十冊が世界中に現存しているという。日本でもここ東大理学部のほか,北大,大阪市大,九大,慶應大学などが収蔵しており,稀覯(きこう)本とは言えないくらい沢山世に残っている。読み捨てにはされずに代々大事にされてきた証左とも言えよう。

ダーウィンの名声を一気に高め,そして人々の世界観を大きく変えた記念すべき本である。

種分岐を説明するための樹形図  


理学部ニュース2019年5月号掲載



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