2019年度文部科学大臣表彰
科学技術賞・若手科学者賞を3名が受賞

広報誌編集委員会

2019年度科学技術分野の文部科学大臣表彰が発表されました。理学系研究科からは,藤堂眞治教授が科学技術賞(科学技術振興),原野幸治特任准教授と岩崎渉准教授が若手科学者賞を受賞しました。この表彰は,科学技術に関する研究開発,理解増進等において顕著な成果をおさめた方に与えられるものです。

藤堂眞治教授

藤堂眞治教授(物理学専攻)は,業績 「計算物質科学ソフトウェアの開発技術の振興」による受賞です。国内外で開発された最先端の物質科学シミュレーションソフトウェア情報を提供するポータルサイトの立ち上げや,それらのソフトウェアを手軽に利用するためのツール開発,講習会開催などを通じて,計算物質科学分野の振興に貢献したことで,物性研究所の研究者4名と連名での受賞となりました。

計算物質科学分野では,さまざまなプロジェクトや研究グループで,たくさんのソフトウェアが開発されていますが,欲しい機能をもつソフトウェアを見つけ出すことはたいへん困難です。藤堂教授らが運営している「MateriApps」では,ソフトウェアの機能や特徴を簡潔にまとめて紹介するだけでなく,充実した検索機能や相談窓口も提供しており,ユーザとソフトウェア開発者をつなぐ役割を果たしています。現在は月間ユーザ数約4千人で,海外からもアクセスされるひじょうにアクティブなサイトとなり,分野振興に大きく貢献しています。

原野幸治特任准教授

原野幸治特任准教授(化学専攻)は,「電子顕微鏡による分子の動的過程解明と機能開発研究」の業績による受賞です。分子および分子集合体を一分子レベルで観察する技術の開発とその応用展開についての業績が評価されました。

分子を扱う科学者にとって,「分子が反応する様子」「分子が集まって結晶となる様子」 などの動的な過程を,分子ひとつひとつをみて分析し研究することは長年の夢であり, 得られた知見に基づいて学術・社会に役立つ物質創製の学理を確立することは現代科学の一大挑戦です。原野特任准教授は, 有機分子およびその集合体をナノカーボン材料に担持することで原子分解能の動画としてその動きをとらえられることを利用し, 精密に構造が制御されたさまざまな分子集合体の開発に成功し,それを医療やデバイス応用に展開しました。最近では,数十の分子の反応を逐次的に原子分解能顕微鏡で追跡して「反応はランダムにおこるが総和を取ると一次反応に従う」ことを明らかにし,単分子反応が統計論的反応速度論にしたがって進むことを実証するとともに,電子顕微鏡観察下で起こる未知の化学反応機構を解明することに成功しました。

岩崎渉准教授

岩崎渉准教授(生物科学専攻)は,「生物学と情報学の複合的アプローチによるゲノム進化研究」の業績による受賞です。「進化の理解」はあらゆる生物学分野における究極的な課題であり,また「私たちはどこから来たのか?」「何故いまここにいるのか?」といった哲学的な問いにも深い影響を与える領域です。そのためには, 近年の解析装置によって生み出された膨大な生物学データに基づく進化学を展開するための情報科学技術や,複雑で精巧な生命が進化したメカニズムを明らかにするためのバイオインフォマティクス研究が不可欠となります。岩崎准教授は,この新しい研究領域において,生物学と情報学の双方の専門性を活かした先駆的な研究を幅広く展開してきました。たとえば近年では,さまざまな環境に適応できる生物(ジェネラリ スト)と特定の環境に特化した生物(スペ シャリスト)について,そうした両極端の戦略を取る生物が自然界で進化するメカニ ズムを大規模データ解析によって明らかにしています。

 


※この文章は,常行真司教授(物理学専攻,藤堂教授記事),中村栄一特任教授(総括プロジェクト機構/化学専攻,原野特任准教授記事),黒田真也教授(生物科学専攻,岩崎准教授記事),がそれぞれ執筆されたお祝い原稿を広報誌編集委員会で再編集したものです。

理学部ニュース2019年5月号掲載



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