石をたずねて三千里

江口 ゆき(地球惑星科学専攻 修士課程1年生)

単細胞生物として長い間生きてきた動物は、いつどのように多細胞化したのだろうか。 南オーストラリアでは先カンブリア時代の地質が広がり、動物の起源に迫る研究が多く行われている。しかし、初期多細胞動物の化石であると誰もが認める決定的な証拠はいまだ 見つかっていない。私は8~6億年前の地層が良く露出する南オーストラリア州のフリンダーズレンジで、研究室の方々と一緒に調査を行ってきた。

南オーストラリア州の都市アデレードから車で500km北上し、見渡す限り黄土色の大地にソルトブッシュが点在するだけの地に辿り着いた。アウトバックとよばれる広大な大地だ。露頭(岩石や地層が地表面上に露出している場所)探しから研究は始まるのだが、枯れ川を越え、衛星画像を頼りにかすかに確認できる轍を縫うように進み、想像以上にインディ・ジョーンズだ。ようやく見つけた露頭を見て感動するのも束の間、炎天下の中ハエにたかられ、すぐに皆の顔から笑顔が消える。論文に記載するためのデータをとり、ハンマーで岩を叩いてサンプルを回収していく。

見渡す限りアウトバックが広がる。音も風もない

一日の仕事が終わり、夕暮れが近づくと宿に戻る。ゲストハウスは石作りの4LDKだが、夕食付きのホテルではないので、自炊をしなければならない。「仕事の後のビールは旨いなぁ」なんて話しながら、スーパーで買いこんできた食材を使って、好きなものを作る。研究室の人たち皆と作った料理を囲みながらゆっくり落ちていく日を見ていると、明日も研究頑張ろう、と思えてくる。

夕食のメインディッシュはラム肉炒め。ポスドク(左)と筆者(右)

東京に生まれ育った私にとって、最も驚いたのは人が全然いないこと。しかし、出会う人は良い人ばかりだ。必ず挨拶は交わすし、困っていたらすぐに助けに駆けつけてくれる。一日に2度もパンクして露頭に辿り着けない日もあったが、人々の優しさに助けられて、無事に一週間の調査を終えることができた。

化石探しの作業は大学に帰ってからも続く。わくわくしながら持ち帰ったサンプルを薄片や粉末にして生命の痕跡を探すのだが、期待通りの結果が出るとは限らない。オーストラリアでの野外調査を乗りきった経験を忘れず、今後の研究生活でも、先輩や同級生と議論をしながら動物の起源に迫る証拠を見つけていきたい。



 
2018年3月 東京理科大学理学部化学科 卒業
2018年3月 東京大学大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻修士課程 入学
現在に至る


理学部ニュース2019年3月号掲載

 


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