波が運ぶ宇宙プラズマのエネルギー

北村 成寿(地球惑星科学専攻 特任研究員)

 


宇宙空間はプラズマで満たされているため,プラズマのふるまいを理解することが宇宙空間の理解の基礎となる。プラズマを構成する正の電荷をもったイオンは磁場の影響で旋回運動をし,旋回周期はイオンの質量が同じであれば磁場の強さで決まる。さまざまな種類のイオンは,通常は多数のイオンの粒子がバラバラの回転のタイミングで存在し,全体としては回転の軌道に沿ってほぼ均等になっている。しかし,これが不均一になり,電磁場の波を生成したり,波によって加速されたりと波とエネルギーをやり取りできる特徴的なふるまいをすることがある。これを観測で直接とらえてエネルギーの流れを証明することが,理論の正しさ,不十分さを理解するうえで次の重要なステップであった。しかし,そのためには波の周期(今回は約15秒)より十分短い時間で観測が行える粒子計測器が求められていた。2015年にNASAによって打ち上られたMagntospheric Multiscale(MMS)衛星編隊にはこの条件を十分に満たせるデュアル-イオンエネルギー分析器 (0.15秒ごとに計測可能)が搭載された。この衛星は国際協力のもとに実現されたもので,デュアル-イオンエネルギー分析器は,日本で製作されたものだ。4衛星にそれぞれ4台ずつ,合計16台をフルに活用し,波動粒子相互作用解析手法 注)によって波と一緒に変動するイオンの不均一をはっきりととらえ,水素イオンが波に,その波からヘリウムイオンへとエネルギーが渡っているシグナルの観測に成功した。このような波を介した粒子同士のエネルギーのやりとりは理論的には予想されていたが,観測でそのエネルギー輸送量が計測できたのは世界で初めてだ。



  図:波(電磁イオンサイクロトロン波)とイオンの相互作用を計測するMMS衛星のイメージ。

波を介したエネルギー交換や粒子加速は,たとえば,人工衛星に影響を与えるような高エネル ギー電子の生成や,大気の超高層部分を加熱して酸素などの重いイオンを惑星から流出させる際にも重要な役割を果たしていると考えられ,他のさまざまな種類の波動や粒子の組み合わせのエネルギー交換の観測や現象の理解に向け,応用が可能となるように発展させていきたい。

本研究は,N. Kitamura et al ., Science, 361, 1000(2018)に掲載された。

(2018年9月11日プレスリリース)

注) 荷電粒子と波の詳細比較をし,エネルギーのやりとりを定量的に解析する手法。日本のあらせ衛星での電子と波の相互作用の研究に向け,日本がリードして手法確立や実証を行ってきており,今回は,より低周波数で,MMS衛星で可能な範囲となったイオンと波との相互作用に適用した。

理学部ニュース2019年1月号掲載

 

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