「短期」滞在を通じてバークレーを知る

濱崎 立資(物理学専攻 博士課程2年生)

三ヶ月というのは不思議な期間だ。およそ一年前の2018年1月から3月まで,私はカリフォルニア大学バークレー校(Univ. California, Berkeley: UCB)に滞在していた。リーディング大学院ALPSの海外派遣プログラムによる,物性理論センター(Condensed Matter Theory Center: CMTC)のエフード・アルトマン(Ehud Altman)教授との共同研究のためである。数ヶ月も海外に滞在するのは初めてのことだったが,いっぽうで春を迎えるとすぐ帰国となってしまった。三ヶ月は長くもあり短くもあり,実際に準備の段階から現地での生活に至るまでそのことを意識せざるを得なかった。

バークレーのシンボル,セイザータワー

まず,準備の時点では戸惑うことが多かった。たとえば今回の渡米は研究目的であったため,手続きの面倒なJ1ビザを取得する必要があった。仮に観光目的だったならば三ヶ月間までビザなしで渡航できるので,なんとなく損をした気分になったものだ。また,住居に関しても,ホテルを使い続けるには高額だし,通常の物件や大学の学生寮は半年以上の契約が多く,三ヶ月だけの滞在の適切な住居探しに苦労した。最終的には民泊仲介サービスを利用して宿をとった。割高ではあったが,後述のように隣人に恵まれ快適に過ごせた。

次に,主目的である現地での研究については,アルトマン教授と数人のポスドクとともに,量子多体系の制御に関する研究に取り組んだ。三ヶ月で完成させるのはなかなか難しいため,帰国後も議論が続くような土台をつくることをひとつの目標として研究を進めた。この作戦はうまく軌道に乗り,今もスカイプで議論が続いている。いっぽう,CMTCの雰囲気や研究スタイルを学ぶのに,三ヶ月は十分な長さだった。CMTCでは(准)教授ごとにグループはあるものの,実際にはほとんどその隔てなく皆が活発に議論しているなど, CMTC全体での結束が強い。学会発表やjob interviewの練習もCMTC全体で積極的に行っており,衝撃を受けた。

そして日々の生活,三ヶ月という限られた時間の使い方がもっとも変わってくるのはここにおいてであろう。私は比較的マイペースに過ごしてはいたものの,人との交流の機会は大切にしようと心がけた。隣の部屋に住んでいた日本人と仲良くなり,彼のおかげで多くのUCB日本人関係者(私のようなビジターから,ポスドク,企業関係者,学部生まで)と知り合った。各々がUCBにたどり着いた経緯などを聞くことができ,勉強になった。また,彼が帰国したあと入居した中国人家族には中華料理を振る舞ってもらい,お互いの文化を紹介しあった。ずっとハウスメイトながら最初はほとんど話さなかったフランス人ポスドクとも最終的にひじょうに仲良くなり,一緒にパイを作ったりチェスをしたりもした。こうした三ヶ月はとても楽しく,彼らのおかげで海外滞在への抵抗もすっかりなくなったと思う。

バークレー近隣のオークランドで世界一強いバスケチームの試合を観戦

三ヶ月という海外滞在の利点は,常に新鮮な心持ちで多くのことを経験できることだ。生活および研究の刺激を堪能するには十分な長さであり,このような有意義な機会をくださったALPS関係者の方々には感謝しきれない。いっぽう,ようやく慣れてきたところで帰国したのはやはりさみしく,その期間の短さを痛感する。もうすでにバークレーを懐かしく,再訪したいと感じている。

 
2015年3月 東京大学理学部物理学科 卒業
2017年 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修士課程 修了 
現在同博士課程在籍
2015年~ フォトンサイエンス・リーディング大学院コース生
2017年~ 日本学術振興会特別研究員 DC1


理学部ニュース2019年1月号掲載

 


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