「花の分子発生遺伝学
 -遺伝子のはたらきによる花の形づくり」

平野 博之(生物科学専攻 教授)


平野 博之,阿部 光知(共著)
「花の分子発生遺伝学
- 遺伝子のはたらきによる花の形づくり」
裳華房(2018年出版)
ISBN 978-4-7853-5868-6

受精卵というたった1個の細胞から,どのようにして複雑な体制をもつ生物が作られてくるのか,その仕組みを明らかにすることは,多くの人の興味をひく課題であろう。生物が形作られる仕組みを取り扱う分野が,「発生学」である。私が学生の頃までは,「発生学」は記載的な分野であった。しかし,現在では,多様な生物やさまざまな発生過程を対象として,遺伝子やタンパク質などの働きから発生の分子メカニズムを解明する,「分子発生遺伝学」の研究が進んでいる。

本書は,植物の代表的な器官である「花」が,どのような遺伝子の働きにより,どのようなメカニズムで作られてくるのか,その発生の制御機構を解説したものである。動物とは異なり,植物は成長しながら葉や花などの器官を作り続ける。この基礎となるのが頂端メリステム(分裂組織)である。本書では,植物の発生の根幹であるこのメリステムの機能とも関連させながら,花の発生機構を解説した。

花の分子発生遺伝学は著者2名が長年携わってきた研究分野であり,本書はそれをもとに生物学科の3年生を対象とする「植物発生学II」で行った講義を基盤としている。本書では,単なる発生学の知識や現在の到達点を解説するのみではなく,発生機構の解明がどのような研究によってもたらされてきたのか,その研究の内容や歴史に踏み込んで解説するように心がけた。植物発生学の研究の面白さや醍醐味も味わってもらえれば幸いである。

理学部ニュース2018年11月号掲載


 

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