体内時計研究の最前線に触れる

阿部 泰子(生物科学専攻 修士課程2年生)

時差ぼけを最小限に抑えるためには,いますぐに寝るべきか否か。そんな議論をしながら,夕方でもまだまだ日が高いフロリダへと降り立った。私は,生物科学専攻の深田研究室にて,ほ乳類の体内時計メカニズムを研究している。ラッキーなことに,1年おきに米国にて開催される時間生物学会(Society for Research of Biological Rhythms meeting)でポスター発表を行うチャンスをいただいたので,2018年5月11日(金)から1週間,初めての国際学会に胸を躍らせながら渡米した。

体内時計は,遺伝子からタンパク質をつ くる量を日内変動させることによって睡眠や代謝のリズムをつくり出しており,海外に行ってもしばらくは日本時間に合わせたリズムでタンパク質が作られてしまうこと から時差ぼけがおきる。体内時計の仕組みは,バクテリアからヒトにいたるまで地球上のほぼすべての生物が保持しており,学会には,さまざまな生物種を扱う研究者が集まっていた。折しも昨年,ショウジョウバエにおける体内時計メカニズムの発見に対してノーベル医学・生理学賞が授与されており,学会はお祝いムードにあふれていた。3人の受賞者のうち,M. ロスバッシュ(Michael Rosbash)博士とM. ヤング(Michael Young) 博士の2人も学会に参加しており,3日目の夜にはノーベル賞記念講演が行われた。時計遺伝子発見の経緯や,ノーベル賞授賞式の裏話など,たくさんの写真とジョークを交えながら2 人が講演を行い,最後はスタンディングオベーションによって盛大な賛辞がおくられた。体内時計の仕組みが少しずつ紐解かれ,たくさんの人の手を経て今があると思うと,研究という営みの壮大さに圧倒される気がした。

2017年度ノーベル賞受賞者 M.ヤング博士と。(右:著者)

 

また,今回の学会では,学生やポスドクなどの若手研究者も積極的に参加できるような工夫がされており,たとえば,シンポジウムの合間に「Meet the professor room」という部屋に行くと,著名な研究者に会ってアドバイスをもらうことができる。毎日この部屋に通ったところ,ノーベル賞受賞者のM. ヤング博士をはじめとする多くの教授と会って話すことができた。ヤング博士はとても気さくな方で,最近の研究成果に関する質問にも丁寧な答えをくれたほか,写真撮影にも快く応じてくれた。

さらに,若手向けのワークショップも充実しており,さまざまな国の学生と交流することができた。研究内容にとどまらず,各国の文化の話から最近はやりのビジネスに対する賛否など,多岐にわたるトピックが話題にのぼり,視点を広くもつことと意見を明確に主張することの大切さを実感できるよい経験となった。

会場近くのホテルの部屋から撮影。お昼休みには友人たちとビーチを散歩した

 

最後にこの場をお借りし,学会への参加にさいしてたくさんのアドバイスをくださった深田研究室の皆様と,渡航を支援してくださった加藤記念バイオサイエンス振興財団に厚く御礼申し上げます。

 

 
2017年3月 東京大学理学部生物化学科 卒業
2017年4月 東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻修士課程 入学
2018年4月 東京大学国際卓越大学院ライフサイエンスコース1期生 現在に至る


理学部ニュース2018年9月号掲載

 


遠方見聞録>

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加