星震学

星震学

髙田 将郎(天文学専攻 助教)

星震学とは一言で言うと星の地震学であり,星の表面の振動から内部を探る研究分野である。その源流は,脈動変光星の研究と日震学である。恒星の中には形を変えながら周期的に明るさの変化するものがあり,脈動変光星とよばれる。代表的なものはケフェウス座δ型変光星(セファイド)で,これは,20世紀初期から知られているように,距離が同じなら長周期のものほど明るいため,変光の周期から距離を決定できるという重要な性質をもつ。20世紀中期以降になると,他の星(白色矮星やA型特異星など)でも脈動変光が多数検出されるようになったが,これらはセファイドと異なり,複数の周期をもち,非球対称な変形をする。いっぽうの日震学は太陽の場合の星震学である。太陽表面で周期約5分の微弱な振動が発見されたのは,1960年頃であるが,その後この現象は深部にまで伝わる固有振動であることが確立したため,表面の振動から内部の構造を調べるという逆問題の手法が可能になった。日震学は1980年代頃から大きく発展し,表面対流層の深さや自転角速度の分布といった貴重な情報が得られている。

日震学の成果を受け,他の星でも同じ成功をという機運が高まった結果,脈動変光星はもはや単なる距離指標ではなく,恒星の内部構造を探査し,星の進化理論を検証する場となった。20世紀末以降とくに太陽型の振動が続々と検出されるようなり,星震学の対象が急速に拡大した。背景には系外惑星探査に用いられる観測技術の応用がある。中でもフランスのCoRoTやアメリカのKeplerといった現在運用中の人工衛星計画では,高精度連続測光観測のおかげで,膨大かつ精密な観測結果が得られている。最近の大きな成果としては,赤色巨星の星震学(従来表面の観測量からはわからなかった中心構造の識別,内部微分回転の検出など)が挙げられる。

著者は最近星震学の基盤となる恒星振動の基礎理論,とくに固有振動モードの数学的に完全な分類方法について研究している。このほか天文学専攻の柴橋博資教授とその大学院生は,日震学や星震学,恒星振動の理論的研究を,松永典之助教は脈動変光星の観測的研究を遂行している。