火山ガス

火山ガス

森 俊哉(地殻化学実験施設 准教授)

火山ガスは,マグマの中に溶解していた揮発性成分が,マグマから脱ガスし,火山の火口や噴気孔から放出される気体成分のことを指す。その温度は,水の沸点以下の低温のものから1000℃をこえる高温なものまである。低温な火山ガスは,その上昇過程で熱水系や地下水系などとの相互作用により,マグマ起源のガスだけでなく,熱水系や地下水系の成分を混在して含んでいる。一般に高温なガスほど,その影響は少ない。

火山ガスは,水蒸気,二酸化炭素,二酸化硫黄,硫化水素,塩化水素,フッ化水素,水素など多種の成分を含んでいるが,そのほとんどを水蒸気が占め,島弧火山の場合90%以上を占めることが多い。高温の火山ガス成分に含まれる,二酸化硫黄,塩化水素などの酸性ガスは有毒であり人体への影響が大きいほか,周辺の環境や植生にも多大な影響をもたらす。2000年9月から2005年2月までの約4年半もの長期にわたり,三宅島島民が全島避難を余儀なくされたのは,噴火以降続いた大量の火山ガス(とくに二酸化硫黄)放出によるところが大きい。また,噴火噴煙が成層圏へ到達するような場合,火山ガスが引き起こす地球環境への影響も無視することはできない。

火山からの噴出物は,火山の地下の状態や地下で起こっている現象を地上へと伝えてくれ,火山現象を理解するうえでの欠かすことのできない情報源である。その中で火山ガスは,噴火していない時でも唯一手に入れることができるマグマ物質であり,この意味で,火山ガスの情報は貴重である。火山ガスの化学組成は,揮発成分の源であるマグマの種類や酸化状態を反映することはもちろんのこと,マグマからの脱ガス時の温度・圧力を反映して変化するので,その挙動のモニタリングは火山活動の推移をみるうえで重要である。近年の観測技術の高度化と観測機器の小型化により,噴火に先行する火山ガス組成変化やガス放出量変化がとらえられるようになり,火山活動の予測の面での貢献が期待されている。

本研究科附属地殻化学実験施設では,火山ガス組成・放出率の遠隔測定や火山ガス中の希ガス同位体比測定を機軸とし,火山ガス放出過程の理解を目指した研究を進めている。