クラウドソーシング

クラウドソーシング

坂本 大介(情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻 助教)

クラウドソーシング(Crowdsourcing)とは不特定多数の人々(Crowd)に作業を依頼する(Sourcing)業務委託や問題解決の新しい手段である。理学のキーワード第29回の平木敬教授による「クラウドコンピューティング」(Cloud Computing)と同様にインターネットを手段として利用するが,クラウドソーシングでは作業を委託・委譲先の他者が行うことになる。

よく知られた業務委託形態であるアウトソーシングでは,業務や作業を専門家に依頼する。一方,クラウドソーシングでは作業を不特定多数の群衆に依頼する。一般に,クラウドソーシングのためのウェブサービスを経由して群衆の中で受託者を募る。通常,作業を行った受託者は委託者から報酬が得られるが,その報酬はアウトソーシングの場合より安価であることが多い。

このクラウドソーシングが,なぜ理学の道具として有用なのか。昨年,オンラインゲーム「Foldit」のプレイヤー達がタンパク質の正確なモデル作成を行った研究注)が,ネイチャー誌に掲載されて大きな話題となった。ゲームのプレイヤーの多くは生物化学の専門家ではないにもかかわらず,長年未解決であった問題が短期間で解かれたため,問題解決の新しい手段としてのクラウドソーシングが大きく注目される一つのきっかけとなった。

このようにクラウドソーシングが扱う対象は,一般的な業務だけではなく,科学的問題の解決や,日常の諸問題の解決まで多岐に渡る。たとえば,ビデオシーンや画像の認識,ウェブの検索,そして講義の課題をクラウドソーシングするようなシステムも提案されてきている。

群衆に作業を依頼するためには,適切な形で作業を群衆に提示する必要がある。これはユーザインタフェースの問題であり,ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)と呼ばれる研究分野において急速に注目を集め,数多くの研究が行われている。将来的には「Foldit」の例のように群衆が計算資源の一部となり,我々の研究活動を自然と助けてくれるようになることを期待している。

注)
F. Khatib et al., Nat. Struct. Mol. Biol. 18, 1175 (2011).