電気磁気効果

廣瀬 靖(化学専攻 助教)

一般に,物質の磁化(電気分極)は磁場(電場)の印加によって誘起される。いっぽう,電場(磁場)の印加によって物質の磁化(電気分極)が誘起される場合がある。このような現象は電気磁気効果(Magnetoelectric effect)とよばれ,新たな動作原理に基づく多値メモリやスイッチング素子などに応用することができる。

電気磁気効果の概念は19世紀末にピエール・キュリーによって提案された。数十年にわたりその存在の有無が理論家によって議論されてきたが, 1960年にはじめてCr2O3において電気磁気効果の存在が実証された。その後,電気磁気効果を示す物質は次々と発見されたが,誘起される磁化や電気分極が小さいことから応用には至らなかった。ところが2000年代に入って,強磁性と強誘電性をあわせもった材料において,巨大な電気磁気効果を示すものが発見された。このような材料は複数の強的秩序(ferroic order)を有することから,マルチフェロイクス(multi-ferroics)材料とよばれる。現在では,マルチフェロイクス材料の開発がさかんに行われている。

マルチフェロイクス材料の開発はおもに,①ナノサイズの強磁性体と強誘電体を混合する,②らせん磁性など特有のスピン秩序によって巨視的な電気分極を誘起する,という2通りの戦略にそって進められている。後者においては,大きな電気磁気効果が実現可能な反面,電気磁気効果の発現が低温(数10K程度)に限られるという課題があった。しかし, CuOや六方晶フェライトなどの材料において室温付近で電気磁気効果が観測され,注目を集めている。

本研究科では化学専攻の長谷川哲也教授の研究室で磁性酸化物を中心としたマルチフェロイクス材料の開発が行われており,物理学専攻の島野亮准教授の研究室でテラヘルツ光を用いたマルチフェロイクス材料の基礎物性に関する研究が行われている。