クエーサー

峰崎 岳夫(天文学教育研究センター 助教)

クエーサーとは銀河の中心の非常に狭い領域が明るく輝いている天体である。X線から紫外線・可視光,赤外線や電波まであらゆる波長で明るく輝き,放射エネルギーが太陽の明るさの1兆倍以上にも達する,全宇宙でもっとも明るい天体のひとつである。その中心部には太陽の1億倍以上の質量をもつ巨大なブラックホールが存在し,そこにガスが落下するのに伴って解放される重力エネルギーが莫大な放射の源となっていると考えられている。実は銀河のうち約1-10%ではその中心部において,クエーサーほど極端でないにせよ特徴的な放射がみられることから,同じく巨大ブラックホールへのガス落下を起源とする現象が起きていると理解される。これらはまとめて活動銀河核とよばれる。

しかしクエーサーは見かけでは星と区別がつかないため,それが遠方のきわめて明るい天体であると「発見」されたのはわずか50年ほど前のことで,宇宙膨張の発見よりも新しい。以来,莫大なエネルギーを放射する特異な天体として,また明るいがゆえ遠方の宇宙を探査する有力なツールとして注目された「新天体」の研究は急速に進展した。全波長的な観測や理論的な考察によって基本的な放射機構や内部構造が明らかになった。また精力的な捜索によりこれまでに知られているのは約14万個,宇宙誕生からわずか8億年後の宇宙にもクエーサーが発見された。さらに最近では近傍の普通の銀河の中心部にも普遍的に巨大ブラックホールが存在すること明らかになり,さらにその質量と母銀河の星質量とが相関していることが発見された。このためクエーサーと銀河が互いに影響し合いながら進化すると考られるようになり,現代天文学における新しい重要課題となっている。

天文学教育研究センターではクエーサーに関連してさまざまな研究が行われている。クエーサーの明るさが時間変化するという性質を用いて,吉井讓教授,筆者のグループは放射機構・内部構造の解明とその応用について,土居守教授,諸隈智貴助教のグループは暗い活動銀河核の探索と巨大ブラックホールの成長について研究を進めている。川良公明准教授のグループはクエーサー放射の輝線から遠方・初期宇宙の銀河の,小林尚人准教授のグループはスペクトル中の吸収線からクエーサーを遮る銀河間ガスの,元素組成比と星形成史について研究を進めている。