グローバルイルミネーション

西田 友是(新領域創成科学研究科 教授 理学部情報科学科 兼担)

コンピュータグラフィックス(CG)はリアリティのある画像生成を目的に発展してきた。3D物体のCG画像を生成するには,形状モデルのほかに,視点位置,光源,材質が必要で,照明効果や材質をいかに物理則に忠実にモデル化するかが写実性に影響する。照明効果として,グローバルイルミネーション(global illumination,大域照明)がある。これは光の相互反射,散乱,屈折などを正確に扱う描画法のことで, ある点に入射する直射光の反射光のみ扱う従来のローカルイルミネーションの対義語である。写実性を増すための重要な技法としてレイトレーシング法とラジオシティ法があり,後者がグローバルイルミネーションの代表的な手法である。

物体の表面の輝度は,レンダリング方程式とよばれる式を解くことにより得られるが,これは,周囲からの光の影響も考える再帰的な積分方程式であり簡単には解けない。それで,解法としては,対象となる物体表面を幾つかの要素に分割し,有限要素法と同様に連立方程式を解く方法(ラジオシティ法とよぶことが多い)と,確率的にモンテカルロ法で解く方法とがある。典型的なラジオシティ法では,場面が完全拡散面で構成されていることを前提としており,光源から放射された光が何度か拡散面によって反射された後で視点に至るという現象を再現できる。この場合,視点を変えても面の輝度は変化しないので,リアルタイムレンダリングに有用である。またラジオシティ法は,間接照明が扱え,境界のぼやけた影,周囲の面の反射による,付近の面の色の変化などを計算でき,写実性を増すのに効果がある。

歴史的にみるとラジオシティ法は,熱伝導の考え方を拡張したものと,照明工学における相互反射光の計算法に基づくものがあり,前者はコーネル大,後者は筆者が最初に発表(1985年)した。その後これらを発展させ,膨大な数の論文が発表されている。そのひとつとしてフォトンマップ法があり,屈折による集光効果を表現できる。また物質内の多重散乱を扱うサブサーフェススキャタリング(たとえば肌色や雲の色の計算)など多様な光学的効果を表現できる手法も開発されてきた。近年当研究室では多重散乱光の効率的サンプリング法を開発している。