超幾何関数

大島 利雄(数理科学研究科 教授)

岩波全書の数学公式Ⅲ-特殊函数-は,その3分の2以上がガウスの超幾何関数とその特殊化であるベッセル関数や古典直交多項式で占められている。

この関数が2階の超幾何微分方程式

の原点での収束ベキ級数解
として特徴づけられることはオイラーが研究していた。 での値はガウスの和公式として知られ,この関数の大域的振舞はそれから得られる。

 この関数は特異点0,1,∞を除いた複素数平面内の任意の道に沿って原点の近くから解として接続されて,局所的には収束ベキ級数で表せる。特異点の近くで解の増大度がベキ関数程度で抑えられるとき,その点を確定特異点といい,そこでの解の局所的振舞を定めるベキの指数が方程式から分かる。複素数平面で∞を含む3つの確定特異点を除いて接続できる関数が2次元線型空間をなすなら,それはこの超幾何微分方程式の解空間に対応することをリーマンが示した。

これら古典的結果は,より一般の微分方程式を考えることにより,3つの方向に発展した。特異点での局所的振舞で関数が決まってしまう場合,すなわちrigidなものの研究,そうでない場合に局所的振舞で決まらないパラメーターが現われることに起因して大域的振舞を保つ変形を記述するパンルベ方程式の研究,アッペルやゲルファントなどによる多変数超幾何関数である。

これらは今まで例として研究されたが,筆者はこれらの統一を模索し,最初の2つの方向については一般理論が分かってきた。たとえば,和が零行列になる3個以上の対角化可能正方行列で,固有値とその重複度とがそれぞれ与えられたものになるものをすべて求めよ,という問題と関係している。

最近の研究から,微分方程式とその解の古典的変換が無限次元線型空間の鏡映変換で定義される群の作用と見なせ,とくにrigidな場合は関数の積分表示や大域的振舞などが具体的に書けることが分かった。これは代数方程式の可解性が群の言葉で表せるというガロア理論と似ている。現在は確定とは限らない特異点を含む場合の研究も進展中である。