テクスチャ合成

五十嵐 健夫(情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻 教授)

テクスチャ合成とは,コンピュータグラフィクスの技術のひとつであり,岩肌や木目などの一定の質感をもつ画像(テクスチャ)をサンプルとして受け取り,サンプルと同じような見栄えをもつより大きな画像を自動的に生成する技術である。

初期のころには,サンプル画像内のピクセルの色の分布を統計情報として取り出して,乱数を用いて同じような統計的性質をもつ画像を合成する手法が試みられていた。しかしこの方法は適用範囲がひじょうに狭く実用的なものにはなっていなかった。

その後,2000年前後にマルコフモデルに基づく手法が複数同時期に提案され,大きな成功を収めた。これらの手法は,合成画像のピクセルの色を決めていくときに,その周囲のピクセルの色のパターンを取り出し,そのパターンにもっとも近いものをサンプル画像の中から検索して利用する,というものである。ひじょうに単純なアルゴリズムでありながら,高品質な画像が得られるということで反響が大きく,数々の高速化手法や,応用が提案されてきている。

テクスチャ合成技術のひとつの応用として,イメージアナロジーとよばれる,画像のペアから画像フィルターを自動的に計算して,他の画像に適用するというものが提案されている。たとえば,写真と油絵風の画像をペアで与えると,「写真を油絵に変換する画像フィルター」が自動生成され,それを別の写真に適用すると,自動的に油絵風の画像が生成される。

また別の手法としては,ピクセル毎に計算するのでなく,ある程度の領域をパッチとして切り出して,それらを境目が目立たないようにモザイクのように組み合わせていく,といったものも提案されている。

われわれのグループでは,このようなテクスチャ合成を,立体モデルの内部表現の生成に応用する研究を行ってきた。たとえば,果物などの任意の断面を表示するときに,あらかじめ撮っておいた断面のサンプル写真をもとに,任意の断面の画像を自動生成するといったことを行っている。

近年では,市販の画像編集ソフトウェアにもテクスチャ合成機能が搭載されるようになってきている。これにより,これまで手作業で膨大な時間をかけて行っていた作業を,一瞬に行うことが可能となってきており,今後のさらなる普及が期待されている。