発光イメージング

竹内 雅宜(化学専攻 助教)

自然界には,ホタル,コメツキムシ,ウミボタル,夜光虫などのように,自ら光を産み出し,その生存に利用しているさまざまな生物が存在する。これらの生物が光を産み出す分子機構は,古くから,多くの化学者を魅了し,その探究心を掻き立てて来た。1950年代から始まった物質レベルでの研究により,発光生物内では,ルシフェラーゼとよばれる酵素タンパク質が,ルシフェリンと総称されるさまざまな発光物質から光を放つ化学反応を触媒することが明らかにされた。その後の構造生物学の進展は,その反応の本質が,ルシフェラーゼの酸化反応により,発光基質ルシフェリンより生成された励起状態のオキシルシフェリンが,分解により基底状態に戻る際にきわめて高い光エネルギーを放出することであることを解明した。

近年では,生物発光は,その反応機構の解明が研究対象とされるだけではなく,生物現象の可視化にも積極的に応用され,その研究の進展に大きく貢献するようになって来た。発光イメージングとよばれる,この解析手法は,ルシフェラーゼの発光反応を利用し生物現象を可視化するものであり,生物試料に対する励起光の照射を必要としない。そのため,この手法は,皮膚組織などで覆われ,励起光の透過効率が著しく低下する,動物個体深部における解析を可能とした。また,励起光照射による生物試料への損傷を抑えることができるため,長時間観察も可能となった。また,発光反応は,高いシグナル/ノイズ比と優れた定量性をもつため,ルシフェラーゼ遺伝子をレポーター遺伝子として用いた発光イメージングでは,遺伝子発現を定量的かつ経時的に検出することが可能となった。

現在では,ルシフェラーゼの構造情報を利用したまったく新しい解析手法も加えられ,発光イメージングはさらなる発展を遂げている。化学専攻の小澤研究室では,分割型ルシフェラーゼの再構成システムが開発され,タンパク質間相互作用の新しい発光検出法が提示されている。このシステムは,分断により発光活性を失ったルシフェラーゼのタンパク質断片が,任意の相互作用に依存して再結合し,ルシフェラーゼ分子が再構成され,発光能が回復するという検出原理に基づいている。このシステムを利用した発光イメージングは,自家蛍光の強い動物個体内などにおいて,タンパク質間相互作用や生体分子を可視化定量検出できる有用な手法として期待されている。