隕石

杉浦 直治(地球惑星科学専攻 教授)

隕石は空から降ってくる石のことでほとんどは小惑星から来るが,中には月や火星から来るものもある。空から石が降ってくることは,聖書には書かれていないので,中世のヨーロッパでは隕石の存在は否定されていた。そのために,隕石の存在が一般に認められ,研究が行われるようになったのは1803年に大規模な隕石シャワー(大きな石が空気抵抗で破壊されてたくさんの小さな隕石として降ること)がフランスで観測されて以降のことである。隕石の研究のためには,多くの,良い隕石試料をつかう必要がある。そのために隕石の研究は大英博物館(大英帝国の華やかだった頃に,世界中から隕石を集めた)やアリゾナ大学(アリゾナの砂漠から多くの隕石を回収した)で盛んである。日本も1970年代以降,国立極地研究所が南極で隕石を収集したので,現在ではたくさんの隕石を保有し,それを使って質の高い研究を行っている。現在ではサハラ砂漠からも貴重な隕石が回収されている。

小惑星は地球のような惑星に比べると,その名の通り小さい天体である。天体の冷え方はその表面積と体積の比によって決まるので,小惑星は地球のような惑星に比べると早く冷える。ほとんどの小惑星は今から45億年前には冷たくなって,それ以降は変化していない。そのために隕石を分析することによって,われわれの太陽系がいつどのようにして形成したのかを知ることができる。現在では放射性元素の崩壊を使った年代測定により,太陽系は45.682億年前に形成が始まり,その後300万年ほどの間にほとんどの小惑星が形成(集積)したことが解っている。しかしまだ解らないこともたくさんある。始原的な(熔けていない,堆積岩のような)隕石にはコンドルールとよばれる球状のケイ酸塩がぎっしりと詰まっている。これがどのようにしてできたのかは隕石研究の歴史を通じて最大の謎であるが,まだ解明されていない。地球惑星科学専攻宇宙惑星グループでは筆者と比屋根准教授が小惑星起源の隕石を使って太陽系の歴史を明らかにする研究をおこない,三河内准教授が火星起源の隕石を使って火星の歴史を解明する研究をおこなっている。関連した研究は地球惑星科学専攻システム科学グループでもおこなわれている。