すばる望遠鏡

本原 顕太郎(天文学教育研究センター 准教授)

2011年現在,世界では口径8 mを超える大型光学赤外線望遠鏡が13台,稼働している。ハワイ島マウナケア山(標高4200 m)に設置されたすばる8.2 m望遠鏡(以下すばる)もそのひとつで, 1998年の初観測から今日まで,日本の光学赤外線天文学の研究を支える屋台骨である。それまで日本最大だった岡山観測所の1.9 m望遠鏡に比べて,実に20倍の集光力をもつこの望遠鏡は,日本の光赤外線天文学のレベルを世界トップクラスに引き上げる原動力となった。

すばるの観測時間の15%は,マウナケア山頂にひしめく天文台群を管理するハワイ大学に提供されるが,残りの大部分(年間およそ250夜)は全国共同利用に供され,世界中からの観測提案を受け付けている。高い時は5倍を超える競争率の審査を経て採択された観測提案にもとづき,太陽系天体から星惑星形成,銀河形成進化,宇宙論まで,幅広い分野の観測がほぼ毎晩,行われている。ただマウナケアといえども晴天率は70%足らずで,天候不順によって観測できなかった場合は,次期以降に改めて観測提案を提出し直さないといけない厳しい世界でもある。

すばるは4つの焦点をもち,そこにさまざまな観測装置を設置することで,可視光から波長20 μmの中間赤外線までの幅広い波長で,多彩な観測を行うことができる。しかし何といっても最大の特徴は,直径30分角(満月のサイズ)の広い視野をもつ主焦点である。ここに設置されている可視光広視野カメラのシュプリーム・カムは,天文学専攻の岡村定矩教授のグループにより開発され,初観測から12年経った現在も,その良好な結像性能と相まって,他の8 mクラス望遠鏡の追随を許していない。このカメラにより,2006年には当時としては最遠方の129億年彼方にある銀河(IOK-1)が発見されるなど,とくに初期宇宙の研究に大きな進展をもたらした。

この特長をさらに極めるため現在,視野を10倍近く広げ,直径1.5度角(満月9個分)の視野をもつ次世代の広視野カメラ,ハイパー・シュプリーム・カム(HSC)が国立天文台を中心としたチームにより開発されており,本研究科からは天文学専攻(嶋作一大准教授ら),物理学専攻(須藤靖教授,相原博昭教授ら),ビッグバン宇宙国際研究センターなどが参加している。このカメラで遠方銀河などの大規模サーベイ観測を行い,宇宙の加速膨張を起こしていると考えられている暗黒エネルギーを測定するプロジェクトが計画されている。