晩期型星

宮田 隆志(天文学教育研究センター 准教授)

夜空に輝く恒星は多様であり,その性質は主に星の質量と誕生してからの進化の度合いによって決まる。 恒星の分類は20世紀初頭に確立したハーバード法を基礎としている。 その中で星の温度が比較的高くヘリウムや水素のラインが目立つものを早期型,対して温度が低くスペクトル上に金属の吸収線が多数見えるものを晩期型とよぶ。 晩期型の星は,中心部で安定した水素燃焼をしているものの質量がもともと低いため表面の温度が低い矮星と,中心部での水素燃焼を終え外層が大きく膨らんだ巨星とに分かれる。 銀河系の大半の星は晩期型矮星であり,太陽もその仲間である。 また太陽の8倍以下の質量の恒星は進化末期にすべてこの晩期型巨星段階を通ると考えられている。 その意味で晩期型星はわれわれに最も馴染みある恒星種だといえる。

従来,恒星といえば望遠鏡を通してみても点にしか見えない存在であったが,近年の観測技術の発達は星そのものの空間分解も可能にしつつある。 たとえばヨーロッパ南天天文台の赤外線干渉計VLTIでは 0.01 秒角を切る空間解像度で晩期型巨星表面の構造をとらえている。 このような観測によって晩期型巨星の少なくとも一部は平坦な球面ではなく,非軸対称な姿をしていることが分かってきた。 太陽もやがてはこのような巨星へ進化すると考えられており,この結果は太陽がどのように進化していくかを探る上でも興味深い。

晩期型巨星は宇宙空間にあまねく存在する星間ダストの供給源としても重要である。 特にわれわれの住む天の川銀河ではダストの多くはこれら晩期型星が供給していると考えられている。 このようなダスト形成史を探るには低温度(< 1,000 K )領域のトレーサーである中間・遠赤外線が有用である。 日本の赤外線観測衛星「あかり」は晩期型巨星から放出され広がっていくダストシェルの直接撮影を行い,シェルが幾何学的に薄い球殻のような構造をしていることを明らかにした。 これは質量放出現象が短期間に間欠的に行われていることを示唆しており,恒星から宇宙空間への物質還元を考えるうえで重要な結果である。 将来の衛星計画や地上望遠鏡計画でより高感度かつ高解像なデータが得られれば,宇宙の物質循環がどのように行われているかについてより詳しい描像が得られるものと期待できる。

理学系研究科では著者の研究室や木曽観測所,天文学専攻の尾中研究室で観測研究が行われている。 またダスト形成の観点から地球惑星科学専攻の永原研究室でも実験研究が進められている。