放射線に関する単位

小橋 浅哉(化学専攻 准教授)

放射線に関する単位は,報道にしばしば現れるが,難解である。ここでは,そのうち主要なものを解説する。 単位名はいずれも人名にちなむ。

<放射能の単位>

「放射能」には,二つの意味がある。 ひとつは,物質が放射線を放出するという現象,もうひとつはその現象の強度(物理量)である。 現象としての放射能は,原子核の壊変によりもたらされ,物理量としての放射能は,単位時間当たりの壊変数により表わされる。 その単位はベクレル(Bq)で,ある物質で1秒間に1回の壊変が起きるとき,その放射能を 1 Bq と定義する。 土壌や食品に含まれる放射能を表わすにも Bq が用いられている。 実用上はその千倍に当たるキロベクレル(kBq)や,百万倍のメガベクレル(MBq)を用いることが多い。 旧単位はキュリー(Ci)で,1 Ci は 1 g のラジウム(226Ra)の放射能であり,3.7×1010 Bq に等しい。

<吸収線量の単位>

放射線が物質に当たると,そのエネルギー(の一部)を物質に与える。 物質が,単位質量当たり吸収した放射線のエネルギーを「吸収線量」という。 その単位はグレイ(Gy)で,1 Gy は,放射線のエネルギーが物質 1 kg 当たり 1 J (ジュール)吸収されたことを意味する。 Bqが放射線を出す物質についての量であるのに対し,Gy は放射線を受ける物質についての量である。

<被曝線量の単位>

放射線は生体にもエネルギーを与え,有害な作用をする。 生体に対する放射線の影響を予測・評価する上で基礎となる量が「被曝線量」で,単位はシーベルト(Sv)である。 この量は,生体の組織や臓器ごとに,受けた放射線の吸収線量に,放射線の種類やエネルギーの違いによる補正係数を乗じて算出する。 全身の被曝線量は「実効線量」とよばれ,組織・臓器ごとの被曝線量に,放射線感受性の違いを表わす重みを掛けて合算して求める。 各組織・臓器の重みの和は1であるが,人体の場合,放射線感受性の高い生殖腺には0.20,赤色骨髄には0.12と,大きい値が割り当てられる。 筋肉は重量に占める割合は大きいが,放射線感受性は低いので,荷重係数は0.05以下である。 実用上は,1シーベルトの千分の1や百万分の1に当たる,ミリシーベルト(mSv)やマイクロシーベルト(µSv)がよく使用される。

<線量当量率の単位>

被曝線量は時間積算した値である。 これに対し,単位時間当たりの被曝線量の形で表される「線量当量率」は,ある場所での放射線の強度を示し,人の被曝線量の低減に役立っている。 その単位には,1時間当たりの線量である mSv/h や µSv/h がよく使用される。 たとえば 10 MBq の放射能をもつガンマ線源137Csから,0.5 m 離れた位置での線量当量率は,3.64 µSv/h となる。 報道ではしばしば,被曝線量と線量当量率が混同されており,要注意である。