サブミリ波銀河

河野 孝太郎(天文学教育研究センター 教授)

サブミリ波(波長1 mm~0.1 mm付近の電磁波)の掃天観測(空のある領域全体を,くまなく観測すること)により検出される銀河のことをサブミリ波銀河とよぶ。 その距離は,まだよく解明されていないが,ほとんどは宇宙年齢が約60億年より以前という時代の初期宇宙にあると考えられている。 初期宇宙に存在する銀河は,可視光・赤外線観測でも多種多様なものが発見されているが,これらの銀河種族と比較して,サブミリ波銀河は,いくつかの際立った特徴がある。 第一に,きわめて爆発的に星を生成していること。 その典型的な星生成率(単位時間あたりに生成する星の質量)は,数100~数1000太陽質量/年に及ぶ。 宇宙の歴史を通し,もっとも激しく星を生み出す怪物銀河である。 第二に,可視光・赤外線ではひじょうに暗く,すばる望遠鏡など8 m級の装置でも見えないものが少なくないこと。 そしてもうひとつは,サブミリ波での「みかけの明るさ」が, (宇宙年齢が約60億年~5億年という範囲の初期宇宙にある限り)その距離によらずほとんど一定であること。 この不思議かつ有益な性質は,サブミリ波銀河が,星生成によって数10 K程度に暖められたダストの熱放射で輝いており,その放射(波長約0.1 mm付近にピークをもつ)が,宇宙膨張の効果で引き延ばされ,長波長側へシフトしたところで観測されている,という事情に起因する。

サブミリ波銀河は,初期の宇宙にどれだけ存在したのだろうか。 標準的な銀河形成理論によれば,軽く小さい銀河から先に誕生する。 きわめて高い星生成率を示すサブミリ波銀河は,質量が特に大きい暗黒物質の塊の中で誕生すると予想されるため,最初はひじょうに少ないはずである。 ところが,ここ1~2年,急激なサブミリ波観測技術の進歩と観測の進展に伴い,宇宙年齢が10数億年という時代に存在するサブミリ波銀河が相次いで報告され,話題となっている。 現在知られているもっとも遠いサブミリ波銀河は宇宙年齢約11億年の宇宙にある。 まもなく稼働を開始するALMAなどにより,今後,さらに初期の宇宙に,より多数のサブミリ波銀河が発見され,理論家を悩ませることになるかもしれない。

理学系研究科では,天文学教育研究センターの河野研究室・本原研究室,天文学専攻の岡村・嶋作研究室などのグループが,サブミリ波望遠鏡ASTEや,すばる・あかりなどの光学赤外線望遠鏡などを駆使して,この怪物たちと格闘中である。