表面超構造

長谷川 修司(物理学専攻 教授)

結晶の中では原子が規則正しく並んでいる。上下前後左右にある原子と結合をつくって一定間隔で並ぶと安定になるのである。たとえば,ダイヤモンド。1個の炭素原子は4本の結合の「手」をもっているので,4つの隣接原子と結合して「ダイヤモンド型格子」をつくっている。しかし,結晶表面にある原子を想像してみると,そこにいる原子は結合すべき相手が片側にはいないので,「手」が余ってしまう。この「未結合手」がたくさんあると不安定なので,その数をなるべく減らそうとして,表面近傍の原子たちは自ら並び替えを起こす。しかし,それはでたらめな並び替えではなく,やはり規則正しく並び替わる。たとえば,隣り合う表面原子2つがペアをつくってお互いの未結合手を無くし,そのペアが多数並んで列をなしたりする。このように,結晶の内部とは異なる周期・間隔で原子たちは並んで安定化する。こうしてでき上がった表面特有の原子配列を表面超構造という。

表面超構造では,原子どうしの結合のようすが結晶内部と違うので,特異な電子状態や物性を示す。たとえば,半導体結晶の表面超構造が金属的な性質をもったりする。最近では,それが超伝導になるらしいという報告も出ている。結晶表面の1,2原子層だけにできるので,究極の「薄さ」の2次元物質ともいえ,低次元物性物理の新しい舞台となっている。また,触媒化学の分野でも表面超構造は重要である。触媒物質は,その表面上で化学反応を進行させるので,その表面超構造によって触媒特性が左右される。さらに,最近よく耳にするナノサイエンスやナノテクノロジーでは,ナノメータスケールのきわめて小さな物質の性質を巧みに利用するが,ものが小さくなれば,中身より表面の効果が支配的になるので,そこでも表面超構造が重要な役割を演じる。本研究科では物理学専攻の私と化学専攻の長谷川哲也教授の研究室が実験的研究を,物理学専攻の常行真司教授の研究室では理論的研究を行っており,応用をにらんだ研究も工学系研究科で行われている。