活断層

池田 安隆(地球惑星科学専攻 准教授)

地殻の中には一般に多数の断層があるが,そのなかには「活きている」断層もあれば「死んでいる」断層もある。活きているものが活断層である。こう説明してもおおかたの人は納得しないので,最初に断層とは何かを,つぎに断層はどのような挙動をするかを,研究史を交えて説明しよう。

プレート運動などに起因して生じる地殻内の応力が地殻を構成する岩石の強度を超えると破壊が生じて,応力は解放される。この時できる破壊面が断層である。一旦破壊面ができると,そこでくりかえし破壊(すべり)が生じ,それにともない破壊面の拡大や破壊面どうしの連結が起こって断層は成長していく。地殻内部には数センチから数百キロメートルまで,さまざまなスケールの断層が存在するが,一般に大きな断層ほど活動の歴史が古いのはこのためである。断層は地殻内の応力をもっとも効率的に解放する方向に発達するので,プレート運動の変化などによって地殻内の応力場が変わると,それまで動いていた断層は「死んで」しまい,新たな方向の断層が生まれる。地殻の変形が極度に進むと断層面そのものが変形し,その結果,死んでしまう断層もある。

地質学者は古くから数十〜数百キロメートルの長大な断層が存在することを知っていたが,それらが実際に動くことを知ったのは,1891年の濃尾地震,1896年の陸羽地震や1906年のサンフランシスコ大地震に伴う地変が世界に紹介されてからであった。活断層(active fault)という言葉が初めて現れたのは,ベイリー・ウィリス(Bailey Willis)が1923年に出版したカリフォルニアの断層図である。この図は将来起こる地震発生場所を予測する目的でつくられ,死んだ断層と活断層とが区別して図示されている。ただし,当時いまだこの区別は曖昧であった。断層が活きているか否かは,それが最近(地質学的「最近」とは過去数万年から数百万年間)くりかえし動いているか否かで判定するが,その方法が確立したのは1980年代になってからである。

活断層は地震の発生源であるため,その活動履歴を精密に復元する試みが最近盛んに行われている。また,その生成・消滅・再活動の歴史の解明は変動帯の進化の解明に重要である。本研究科では筆者の研究室がこれに携わってきた。