小惑星

宮本 英昭(総合研究博物館 准教授,地球惑星科学専攻 准教授 兼任)

日本の探査機「はやぶさ」が探査した小惑星イトカワは,これまで探査機が訪れた天体としてはもっとも小さく,大きなビルほどの大きさであった。表面重力が地球の数万分の1であるこの天体に,砂利が敷き詰められたような地形が見つかったことは,大きな驚きであった。

小惑星が最初に発見されたのは1801年である。セレスとよばれる小さな天体が,火星と木星の間に見つかった。当初は新惑星の発見と考えられたが,あまりにも小さく,さらに似たような天体が近くにいくつも見つかったことから,小惑星とよばれるようになった。その後小惑星は,望遠鏡の性能の向上と共に次々と発見されて,今では太陽系全体に数百万個存在すると推定されている。

小惑星は小さいために,地球から観測するのに困難を伴う。実際ほとんどの小惑星は,形状や表面状態ですら謎に包まれている。そこで無数の小惑星を反射スペクトルの形状に基づいて分類し,これを隕石と比較する博物学的な研究が行われてきた。その結果,太陽から離れるほど揮発性成分が多いことがわかってきたが,これが太陽系の形成初期の名残なのか,長期間にわたる複雑な衝突過程の結果なのかはよくわかっていない。「はやぶさ」探査機がもち帰る予定の,小惑星のサンプルに期待がかかる。

理論的研究や観測から,小惑星は互いに衝突をくりかえしてきたと考えられている。すると重力の小さな天体では,衝突の衝撃で土砂が宇宙空間にまき散らされるので,表面には小さな瓦礫すら存在しないだろうと考えられてきた。ところが予想に反してイトカワには無数の岩塊が存在し,しかもそれらが地滑り地形や堆積構造などを形成していたため,この考え方は修正を余儀なくされた。おそらくイトカワは岩塊の集合体であり,それらが衝突に応じて粉体として振舞っているのであろう,と最近は考えられている。しかしこれが他の小惑星でも生じている普遍的な現象なのか,他にも微小重力下でさまざまな現象が生じているのか,謎は深まるばかりである。小惑星や隕石に関する研究は地球惑星科学専攻の宇宙惑星科学講座や地球惑星システム講座で行われている。