4次元を超える世界

向山 信治(附属ビッグバン宇宙国際研究センター 助教)

私たちの宇宙は,縦・横・高さを表す3次元空間に時間を合わせた,4次元世界であるとされる。しかし,これは不可侵な原理ではない。単に,私たちの感覚やさまざまな観測・実験のおよぶ範囲では,4次元と仮定してもまったく矛盾がないといっているに過ぎない。アインシュタインの相対性理論は時間と空間の概念を4次元時空として融合するが,“どうして私たちは4次元世界に住んでいるのか?”という疑問には答えてくれない。相対性理論は,4次元でも5次元でも,あるいはそれ以上の次元でも,理論としてはまったく問題なく機能するからだ。しかし,だからといって4次元を超える世界,すなわち空間と時間の次元が合わせて5以上の世界に私たちが住むことは可能なのだろうか?

そもそも,5番目や6番目,あるいはさらなる次元があったとしたら,それはどこにあるのか?驚くかもしれないが,答えは“どこにでも存在する”である。これを,簡単な例を使って説明しよう。電線の表面は2次元である。つまり,長さの方向と,断面の周の方向がある。十分近くから見ればそれがわかるのだが,遠くから眺めたらどうだろう。周の方向は認識できなくなり,長さの方向だけが残って1次元の線として見えるはずだ。これと同じことが,私たちの世界にも起こっているかもしれない。つまり,5番目以降の次元があっても,小さく巻き上げられていれば低エネルギーでは感知できないのである。この場合,電線の断面の周の方向が表面上のどこにでも存在するように,5番目以降の次元も,私たちの世界のどこにでも存在することになる。どこにでもあるのに小さくて見えない余分な次元,これは80年以上も前にカルツァ(T. Kaluza)とクライン(O. Klein)によって考案され,そして現在では超紐理論(理学部ニュース2007年7月号P.13「理学のキーワード」記事参照)に継承されている。

7月下旬のリサ・ランドール博士(Lisa Randall)による講演(理学部ニュース2007年9月号P.3「トピックス」記事参照)で知った読者も少なくないと思われるが,最近では,上述の考えのほかにブレーンワールドとよばれる考えが活発に研究されている。まるで窓ガラスについた水滴やホワイトボードについたマグネットのように,私たちがブレーンとよばれる膜のようなものにはりついて離れられないとする考えである。ブレーンの外が4次元を超える世界であっても,ブレーンが空間的に3つの方向にしか広がっていないのなら,ブレーン上にはりついた私たちには4次元世界しか分からない。もしもこの考えが本当なら,近い将来,巨大加速器実験によって4次元を超える世界が検証される可能性があるといわれており,理論と実験の両方の進展が気になる分野である。

4次元を超える高次元理論の研究や,それにもとづく宇宙論の研究は,物理学専攻の宇宙理論研究室・素粒子論研究室,ビッグバン宇宙国際研究センターなどで活発に行われている。