人名反応

山野井 慶徳(化学専攻 助教)

ここ数年「ネーミングライツ」がビジネスとして流行しており,ヤフードーム,スカイマークスタジアム, C. C. Lemonホールなど既存の球場や施設が次々に企業名などを冠した名称に名を変えている。科学の世界でも新しい元素・生物・天体などに対して発見者が命名する権利を得る習慣があり,この場合は人名にちなんだ命名をすることが多い。

ここで説明する人名反応とは,「グリニャール反応」「ウィテッヒ反応」などのように発見者の名前がつけられた有機合成反応を指し,広義には「アルドール反応」などのように反応物あるいは生成物を示唆する化合物群の名称を使って呼び表される古くから知られている反応も含める。名前がつけられているほどの反応であるから合成反応として重要なものが多く,合成に携わる者はしっかりと学習しておくことが必要とされている。

現在では,化学系の大学院生が使用する教科書に100〜200程度の反応が代表的なものとして紹介されている。有機化合物の数は2000万以上あると言われており,これらの合成法もまた無数に存在する。したがって新しい合成反応は最先端の国際誌に数多く報告されているが,これらが新しく人名反応として取り上げられるかどうかのポイントとして,(1)反応の信頼性の高さ,(2)応用性の広さ,(3)多くの合成化学者に利用されるなどが挙げられる。このような反応はそれまでになかった革新的な概念を創出しており,合成法ばかりでなく反応メカニズムや遷移状態の構造という観点から多くの研究者に注目される。そして最初に報告した人に対する敬意を表し,次第に人名反応として定着していく。その中には「鈴木−宮浦反応」「光延反応」など多くの日本人の名前が見受けられ,この分野における日本人の貢献度の高さが窺われる。

理学系研究科化学専攻の無機化学研究室では,特殊な遷移金属触媒を設計・開発し,さまざまな分子変換反応の開発研究を行っている。そのなかには従来の手法ではほとんど生成しないとされてきた化合物が高収率で合成できるなど有用な反応も見い出されており,新しい機能材料や医薬品合成への利用を試みている。