銀河中心

半田 利弘(附属天文学教育研究センター 助教)

電波でみた銀河中心(NRAO/AUI/NSF提供)

いて座の方向にある,銀河の中心部,とくに天の川銀河の中心部のことを銀河中心とよぶ。天の川銀河の半径 20~25 kpc(kpcは距離の単位で 1 kpc=3260光年)に対して,太陽系は中心から 7~8 kpcに位置するが,銀河の中心部は太陽系が位置する円盤部とは異なる特徴を示す。したがって,中心といっても広がりをもち,その大きさも着目する特徴によって異なる。 銀河中心では,ほかでは見られない特異な天体がいくつもあり,それが魅力の1つである。銀河中心では,重力以外に磁場や衝撃波や強い輻射など他の効果の影響も大きいためだろうが,そのしくみについてはまだまだ不明確なところが多い。

可視光ではまったく観測できないことも銀河中心の特徴といえる。太陽系から見ると途中にある大量の塵が可視光を遮ってしまうためである。代わって電波・赤外線・X線での観測が中心となる。

銀河中心を電波でみると,独特な形態をしている。図で右の丸い部分はいて座 A,左の縦棒の部分は電波アークとよばれる。銀河中心の核はいて座 Aに位置するが,電波アークも銀河中心付近にあると考えられている。

電波アークは銀河面に垂直な磁場構造であることは私を含む研究グループが20年ほど前に明らかにした。これだけ大規模で強い磁場構造は天の川銀河のほかの部分では見つからない。多くの研究者の研究にもかかわらず,その成因やエネルギー源については依然不明である。

いて座 Aは東西 2つに分けられる。環状構造を示すいて座 A東は超新星残骸,渦巻状構造を示すいて座 A西はブラックホールを巡るガス流と解釈されているが,その成因や両者の関係については議論が分かれている。

わからないことだらけの銀河中心であるが,1つだけ明確にわかっていることがある。いて座 A西には,強く輝く点状電波天体があり,いて座 A*(エースター)とよばれる。X線や赤外線でも観測され,数十分程度で大きく変光する。周辺の恒星の運動を調べた結果,いて座 A*は太陽の300万倍程度の質量をもつブラックホールであると判明したのである。

銀河中心には103-104cm-3という星間ガスとしては高密度な分子雲が0.35 kpcほどの範囲に広がっている。天の川銀河内では最大規模の分子雲複合体である。ここの分子ガスの温度はその加熱源と考えられる塵より低温であることがわかっており,これも謎である。複雑な速度構造も散見され,磁場や衝撃波の効果と考えられるが,その機構は完全には明らかになっていない。

の魅力あふれる天体を観測し,謎に挑戦しているのは,東京大学理学系研究科では,筆者のほか,物理学専攻の岡朋治助教などがいる。