オーロラ

岩上 直幹(地球惑星科学専攻 准教授)

昭和基地でみられた珍しい赤いカーテン状オーロラ。国立極地研究所准教授・田口真博士撮影

オーロラは南北極域の電離圏(高度100~300km,地磁気緯度65度付近)に現れる発光現象であり,おそらくもっとも衝撃を感じる自然現象のひとつであろう。運良く激しいオーロラに出会えば,腰の抜けるような感動を味わうことができる。しかし,いまにその生成過程には多くの謎が残されている。たとえば,「オーロラ粒子はいかにして加速されるか?」,あるいは「なぜ薄いカーテン状でヒラヒラ動くのか?」など。

オーロラの発光は,磁気圏(太陽風中における地球磁場の勢力範囲,彗星の頭部のような吹流し構造)から降ってくる高速の電子・陽子によって,大気の分子・原子が励起されることによる。エネルギーの源は太陽風にあるはずだが,太陽風粒子が直接入ってくるのではなく,それらは磁気圏尾部(反太陽方向に吹き流された部分)に一度貯められ,しかも加速されて降ってくる。オーロラ粒子の運動エネルギーは1~10keV程度あるのに対し,太陽風粒子のそれは0.1~0.3keVしかない。加速機構はプラズマの波とオーロラ粒子の相互作用あたりにあるのだろうが,いまだに決着していない。生成過程の説明として,しばしばテレビのブラウン管が引き合いに出される。そこでは電子銃で発生させた電子ビームを偏向板で操作し,蛍光面に当てて発光させる。オーロラでは磁気圏尾部が電子銃に,磁気圏磁場・電場が偏向板に,大気が蛍光面に対応する。

通常,見られるオーロラにも2種類ある。ひとつは毎晩同じように現れる定常成分であり,もうひとつは不定期に出現する爆発成分である。オーロラを見に行くからには爆発をみたいが,これは毎晩あるとは限らず,しかも見どころは10分間しかない。定常成分は太陽風が地球の双極子型磁場に当たって生じる朝方から夕方向きの誘導起電力が,磁力線を通じて電離圏でショートしていると解釈できる。いっぽう爆発成分は,磁気圏尾部に磁場の形で蓄えられていた太陽風のエネルギーが,パチンコのゴムを放した時のように解放される現象と考えられる。多くは夜半頃,それまで静かだった定常オーロラに不穏な動きが始まり,あれよあれよという間に全天を覆い尽くし,10分後には衰退を始め,数時間後に基底状態に戻る。この爆発過程も衛星による観測で理解は進んでいるが,予報までには至っていない。理学系研究科では地球惑星科学専攻の宇宙惑星科学講座が関連する研究を行っている。