学部生が行く,プリンストン大学短期留学

学部生が行く,プリンストン大学短期留学

村田 龍馬(物理学科4年)

図1

一緒に行った物理学科4年高木隆司君(左から4番目)と彼のアドバイザー富田賢吾博士研究員(右から2番目), J.ストーン (James M. Stone) 教授(左から1番目),筆者(右から5番目)と筆者のアドバイザーの宮武広直博士研究員(右から1番目)。宇宙物理学科の入り口にて。

図2

アドバイザーのD.スパーゲル (David N. Spergel) 教授(右)と緊張している筆者(左)。物理学科にて

私は,今年の9月末から約2ヶ月間,同じ物理学科4年の高木隆司君と「プリンストン大学との戦略的提携基金奨学生」として,プリンストン大学宇宙物理学科 (Department of Astrophysical Sciences, Princeton Univ.) に短期留学した。目的は,研究活動とセミナーを通して宇宙物理学を学ぶこと,およびプリンストンにいる研究者や学生たちと交流することである。私は,大学院で宇宙物理学を専攻するので,一流の研究者が集うプリンストンで宇宙物理学を学べることにとても興奮していた。

研究活動では,「弱い重力レンズ効果」解析の専門家である宮武広直博士研究員と宇宙背景マイクロ波観測の分野でとても有名なD.スパーゲル (David N. Spergel) 教授の指導のもと,「弱い重力レンズ効果」の解析方法を学び,解析プログラムを開発した。この「弱い重力レンズ効果」とは,アインシュタインが大きく貢献したことで知られる一般相対論から導かれる現象である。まず,大きな質量の周りの空間が歪められる。すると,その歪められた空間を光が通ると光の進む方向が曲がる。この結果,地球から遠くにある銀河が本来の形より少し歪んだ形になり観測される。逆にこの現象を使うことで,光の通ってきた空間にどれくらいの質量があるかが推定できる。お二人に丁寧なご指導をいただき,銀河の周りにある暗黒物質の質量を見積もることができた。帰国後も開発したプログラムを基礎として,研究の対象をさらに広げていきたい。近い将来にすばる望遠鏡で得られる見込みの高解像度データを,今回開発したコードを用いて解析するなどの研究を考えている。

研究活動と同時平行に,プリンストン大学宇宙物理学科,物理学科,およびプリンストン高等研究所でのセミナーに参加した。さまざまな分野の最先端の話題に触れることができたことは嬉しかった。また,一流の物理学者がセミナー中に活発に議論する姿はとても刺激的であった。その中で一番印象的だったのは,アドバイザーでもあるスパーゲル教授である。どのセミナーでもいつも中心となって盛んな議論をしていた。彼の研究とは離れている内容のセミナーでの議論でも,彼は活発に議論しており,幅広い興味をもっていると感じた。物理学者を目指すものとして,彼にとても憧れる。彼は私の研究活動報告のさいに「自分の研究分野だけでなく,他の宇宙物理学分野も知ろうとすることは大切だ。」とアドバイスしてくれた。その言葉を忘れず勉強と研究に励み成長し,いつか研究者として彼と議論したいと強く感じた。

宇宙物理学科では,数人のプリンストン大学の大学院生と友人となった。同世代の彼らと宇宙物理学について語ったのはとても楽しかった。彼らとは,将来一緒に研究する日が来るかもしれない。さらに,教授や博士研究員,およびすばる望遠鏡に関わっている研究者を訪問し,互いに研究内容を話したのは貴重な経験だった。近い将来,彼らと日本や海外で再会する日が待ち遠しい。

最後に,この素晴らしいプログラムを支えて下さっているすべての方々に感謝したい。とくに,アメリカでの生活をサポートしてくれたホストファミリーに感謝したい。

PROFILE

村田 龍馬(むらた りょうま)

2014年 東京大学理学部物理学科 在籍
2015年3月 東京大学理学部物理学科卒業予定
2015年4月 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修士課程において,
カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU) にて宇宙理論を専攻予定