2020/11/12

ゲノム系統地理学が明らかにした交雑によるミトコンドリアゲノムの進化

 

東京大学大学院農学生命科学研究科

東京大学大学院理学系研究科

 

概要

遺伝的に異なる集団間の交雑で生じたゲノム変異の新たな組み合わせは、遺伝子間の協調を妨げ、交雑個体の生存能力や妊性を低下させると考えられています。このような現象はゲノム不適合と呼ばれ、新たな遺伝子の組み合わせを持つ生物の誕生を抑制することから、生物種の進化を考える上で重要な要素です。特に、ミトコンドリアにおけるエネルギー生産活動に関与する複数の遺伝子は、ミトコンドリアが有するミトコンドリアゲノムと細胞核が有する核ゲノムのそれぞれに存在していますが、ミトゲノムと核ゲノム間の不適合(ミト−核ゲノム不適合)がそうした交雑によって生じることが予測されています。本研究では、ハゼ科の魚であるアゴハゼの2つの種内系統の交雑によってミト-核ゲノム不適合が生じ、それを解消するためにミトゲノムの進化が起きた可能性を全ゲノムレベルでの遺伝解析で明らかにしました。

図:ミト−核ゲノム不適合のイメージ図
生物種Aと生物種Bのそれぞれにおいて、ミトゲノムと核ミト遺伝子間は協調して働くことができるよう独自に進化している。しかし、交雑が起こると、生物種Aのミトゲノムと生物種Bの核ミト遺伝子、生物種Bのミトゲノムと生物種Aの核ミト遺伝子といった、これまでになかった組み合わせができ、ミト−核ゲノム不適合が生じる。

 

本研究には、生物科学専攻の岩崎渉准教授が参加しています。

詳細については、農学生命科学研究科 のホームページをご覧ください。

 

―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―