花粉数を減少させる遺伝子を発見
~進化理論の実証から育種技術へ~
横浜市立大学
チューリッヒ大学
千葉大学
新潟大学
東京大学大学院理学系研究科
概要
横浜市立大学 木原生物学研究所 清水健太郎 客員教授(チューリッヒ大学 教授兼任)、千葉大学 土松隆志 客員准教授(東京大学大学院理学系研究科 准教授兼任)、新潟大学 角井宏行 特任助教(前横浜市立大学 特任助教)らの研究グループは、名古屋大学、ドイツ、オーストリアの研究機関を含む国際的な共同研究で、植物の花粉数を制御する遺伝子RDP1を同定しました。また、ゲノム編集を用いて系統 (品種)間の量的な形質のわずかな差を検出する方法を確立しました。RDP1遺伝子の系統間でのわずかな機能の違いを、この方法により定量的に示すことに成功しました。さらに、ゲノム配列中の変異の頻度を系統間で比較することにより、自家生殖する植物では、精細胞の数つまり花粉の数を減らすことが有利になりうるという進化生物学の理論を裏付けました。
花粉の数を制御することは、効率的な交配のために花粉数を増やしたり、花粉症への対策のために花粉数を減らしたりといった実用化が期待され、農学的な視点からも医学的な視点からも注目を集めています。今後、本研究によって同定されたRDP1遺伝子を利用して植物の花粉数を制御する育種技術の開発が期待されます。
本研究成果は『Nature Communications』(日本時間6月8日)に掲載されました。
図 : GWASの結果を示すマンハッタンプロット 1つの点が使用したSNPに対応している。色の違いは染色体の違い。高い位置にあればあるほどそのSNPの違いと表現型(今回は花粉数)の違いの相関が高い、つまり原因遺伝子が近傍にある可能性が高いことを示している。今回、有意だった場所以外にも何箇所か高い相関を示すところがあり、他の遺伝子の関与も予想される。拡大図中の矢印は遺伝子の位置と方向を示している。オレンジの遺伝子が今回の発見となったRDP1遺伝子。
詳細については、横浜市立大学 のホームページをご覧ください。
―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―