2020/05/30

白亜紀末の巨大衝突クレーター形成後に、大規模・長寿命の熱水活動が継続

 

~ 惑星での生命誕生の場に相応しい条件が、クレーターに備わっていた ~

 

東邦大学

東京大学大学院理学系研究科

海洋研究開発機構

千葉工業大学

 

概要

東邦大学理学部の山口耕生准教授、東京大学大学院理学系研究科の後藤和久教授、海洋研究開発機構高知コア研究所の富岡尚敬主任研究員、千葉工業大学次世代海洋資源研究センターの佐藤峰南上席研究員は、アメリカの月惑星研究所(LPI)のデイヴィッド・クリング(David Kring)博士らと共同研究を実施しました。その結果、白亜紀末の巨大な天体衝突クレーターの内部で、当初は300~400℃程あった熱水活動が、約14万km3という非常に大きな範囲で、衝突後100万年間を越える非常に長い期間にわたって、継続していた証拠を発見しました。本研究は、天体衝突によるクレーターの形成が、惑星における生命の起源と進化に関して、極めて重要な熱源と場を提供したことを示唆します。

約6600万年前の白亜紀末、直径約10kmの小天体がメキシコ・ユカタン半島の北部沖に衝突し、環境が大激変して、恐竜を含む生物が大絶滅しました。衝突時に形成された直径約180kmのクレーターの内部の岩石試料を得て研究を行うため、国際深海科学掘削計画(IODP)の第364次研究航海による掘削が2016年に行われ、海底下1,335mに達し全長800mの柱状試料が採取されました。天体衝突で生じた巨大な圧力と温度によって破壊され変質した基盤岩類に焦点をあてて、そこに含まれる特徴的な鉱物や古地磁気の分析を組み合わせた詳細な研究を行いました。その結果、クレーター内では、衝突で生じた(当初300~400℃程あったと推定される)熱水による周囲の岩石への影響が、非常に広い範囲(深度5~6kmで約14万km3)で、衝突後100万年以上にわたって継続していた証拠を得ることに成功しました。

惑星形成の初期には、無数の大規模な天体衝突があったと考えられています。本研究は、その巨大な圧力と熱が基盤岩を破砕・溶融して、多孔質で流体が通り易い岩体を形成することにより、惑星が生命を宿すために必要な熱源と場を長期にわたって提供した、という可能性を明らかにしました。この成果は、生命の起源において有力な「海底熱水起源説」に関して、プレート運動やマントル活動による熱水活動のみならず、天体衝突も熱水活動を誘発するプロセスだったとする「天体衝突(による熱水)起源説(the impact-origin of life hypothesis)」を支持する、極めて重要な発見です。

本研究は、米国科学雑誌『Science Advances』のオンライン版(5月30日付)に掲載されました。

図 :天体衝突によるクレーター形成が誘発する海底熱水システムの断面図。微生物生態系を宿す可能性がある。図はVictor O. Leshyk 氏による。

 

詳細については、東邦大学 のホームページをご覧ください。

 

―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―