1個の陽子が引き起こす大きな核構造変化の発見
-中性子過剰核の存在限界の謎に迫る-
理化学研究所
東京大学大学院理学系研究科
概要
理化学研究所(理研)仁科加速器科学研究センタースピン・アイソスピン研究室のツ・リュン・タン特別研究員(研究当時)と上坂友洋室長、東京大学大学院理学系研究科附属原子核科学研究センターの川瀬頌一郎大学院生(研究当時)、大田晋輔助教、下浦享教授らが参画する国際共同研究グループは、理研の重イオン加速器施設「RIビームファクトリー(RIBF)」の高分解能磁気分析装置SHARAQ(シャラク)を用いて、中性子過剰な「二重魔法数核」である酸素-24(24O、陽子数8、中性子数16)原子核に陽子を1個加えたフッ素-25(25F、陽子数9、中性子数16)原子核内で、24O核の構造が大きく変化している証拠を得ました。
本研究成果は、24O核の大きな構造変化に未知のメカニズムが存在する可能性を示しており、「酸素存在限界異常」と呼ばれる未解決問題の解明につながると期待できます。
24Oは一つでも中性子を加えるとそれ以上中性子を束縛しなくなる「原子核の存在限界」に位置し、その構造は原子核物理学分野における酸素存在限界異常という問題を解く鍵になると考えられています。
今回、国際共同研究グループは、25F核からノックアウト反応により陽子を1個取り除く実験を行い、残る24O核が存在する確率は、最も安定な基底状態よりも、励起状態の方が高いことを明らかにしました。原子核構造をよく説明する理論計算でも再現できないこの結果は、二重魔法数核が閉殻構造を持ち、安定であるというこれまでの常識を覆すものです。
本研究は、科学雑誌『Physical Review Letters』のオンライン版(5月26日付)に掲載されました。
図 : 25F核からノックアウト反応で陽子を1個取り除くと、残る24O核は励起状態に多く存在する
詳細については、理化学研究所 のホームページをご覧ください。
―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―