2020/04/28

TAMA300で実証した量子雑音を抑える新技術

 

国立天文台

東京大学大学院理学系研究科

総合研究大学院大学

 

概要

国立天文台重力波プロジェクトの研究者を中心とした研究チームは、三鷹キャンパスにあるTAMA300を改造し、ゆらぎを制御する技術の開発を行いました。TAMA300は300メートルの基線長を持つプロトタイプのレーザー干渉計型重力波検出器です。研究チームは長さ300メートルのフィルター共振器を構築し、この長い基線長と、KAGRAの開発で培われた防振制御などの最新技術を応用して、大型重力波望遠鏡で必要とされる100ヘルツ以下という低周波におけるゆらぎの制御の実現に成功したのです。このような低い周波数でのゆらぎの制御はたいへん難しく、これまで成功例がありませんでした。

この技術は、KAGRAのみならず、米国のLIGO、欧州のVirgoといった世界中の重力波望遠鏡の次期アップグレードで採用される予定で、その実現性を世界に先駆けて実証したことはたいへん大きな意義があります。この技術を実装することで、現在よりも感度は約2倍、観測可能な重力波現象の数は8倍となります。より多くの重力波現象を観測することで、ブラックホール連星の形成過程や一般相対性理論の精密検証、中性子星の諸性質の解明や、宇宙における重元素の起源など、我々の宇宙に関するさまざまな新しい知見が得られることが期待されます。

 

図. TAMA300を改造して構築したフィルター共振器の心臓部。(クレジット:国立天文台)

 

この研究成果は、Zhao, Y., et al. “Frequency-Dependent Squeezed Vacuum Source for Broadband Quantum Noise Reduction in Advanced Gravitational-Wave Detectors;として、2020年4月28日付けの米国の物理学専門誌『フィジカル・レビュー・レターズ』に掲載されました。米国・マサチューセッツ工科大学の研究グループも16メートルのフィルター共振器で同様の成果を達成し、同じ号で論文を発表しました。なお、本研究には、物理学専攻の有冨尚紀(博士課程3年、安東正樹研究室)が参加しています。

 

詳細については、国立天文台 のホームページをご覧ください。

―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―