2019/11/07

レーザー光で半導体中に超伝導に類似した電子正孔ペア状態をついに実現

 

東京大学低温センター

東京大学大学院理学系研究科

東京大学物性研究所

 

概要

東京大学低温センター/大学院理学系研究科物理学専攻の島野亮教授、室谷悠太博士課程大学院生、東京大学物性研究所の秋山英文教授らは、米国プリンストン大学のグループとの共同研究で、半導体中にレーザー光を照射することで、電子と正孔がペアとなった電子正孔BCS状態と呼ばれる新しい量子状態が生成されることを初めて実証しました。実現に必要な条件を整えることの難しさから、理論的な提案以来50年もの間明確な実証がなされずにいましたが、励起子と呼ばれる半導体中の電子状態とレーザー光の強い相互作用を利用することで、これまでとは違ったアプローチからその状態の実現に成功しました。新しい量子状態を実現したことにより、半導体に光を照射した際にできる電子状態の理解が進むだけでなく、さまざまな物質における量子現象をより深く理解する鍵になることが期待されます。

本成果は、「Physical Review Letters」(米国時間2019年11月8日)に注目論文としてオンライン掲載されました。

図:(a) レーザー光の照射下における半導体結晶(GaAs)の過渡的な光吸収スペクトル(図(a)下段)。励起光の波長(図(a)上段)は励起子のエネルギー(図中「重い正孔励起子」)に合わせている。励起光強度の増大に伴い、励起子の吸収ピークが二つに分裂し(図中の点)、崖のような構造に変化していく。これは励起子の状態から電子正孔BCS状態に変遷していく様子を示している。
(b) 励起子の集団から電子正孔BCS状態への移り変わりの概念図。光強度の増大に伴い、電子正孔対の密度が上昇して励起子から電子正孔クーパー対へと変わっていく。

 

詳細については、東京大学低温センター のホームページをご覧ください。

 

―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―