2019/09/03
葉のかたちがオトシブミの葉の加工を妨げることを発見
-植物と昆虫の相互作用における葉のかたちの新たな役割-
京都大学
東京大学大学院理学系研究科
概要
植物の葉はブナのように単純なものからカエデのように切れ込んだものまで多様な「かたち」を示しますが、自然界でどのように働いているのかはよくわかっていません。京都大学大学院理学研究科 樋口裕美子 博士課程学生、東京大学大学院理学系研究科附属植物園 川北篤 教授の研究グループは、シソ科ヤマハッカ属の草本ハクサンカメバヒキオコシの葉にみられる切れ込みが、ムツモンオトシブミによる葉の加工を妨げることを発見しました。ムツモンオトシブミは、メスが産卵の際に、子のエサおよび住み処となる精巧な「揺籃」をつくるオトシブミ科の甲虫の一種です。ヤマハッカ属で葉に切れ込みのない別種と比較すると、1)メスはハクサンカメバヒキオコシの葉や、人為的に切れ込ませた葉を揺籃基質として好まないこと、2)卵を両種の葉で巻き直すとどちらの葉でも子供は同様に成長すること、3)加工する前に葉を調べるために行う歩行の段階で、ハクサンカメバヒキオコシの葉が忌避されていることがわかりました。この歩行には加工前に葉を測量する意味もあるとされ、ハクサンカメバヒキオコシの葉では切れ込みのために規則的な歩行が妨げられるため、メスは以降の加工を諦めると考えられました。
本成果は2019年9月3日に国際学術誌「Nature Plants」にオンライン掲載されました。
図1: ムツモンオトシブミは、切れ込んでいないクロバナヒキオコシの葉では揺籃をつくることができるが、切れ込んだハクサンカメバヒキオコシの葉では加工前の踏査がうまく完了できず、揺籃をつくれない。
詳細については、京都大学 のホームページをご覧ください。
―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―