2018/10/05

“退屈な10億年”は飢えと酸欠の時代だった

~ 地質記録と理論モデルの融合から得られた太古の地球像 ~

 

東邦大学

東京大学大学院理学系研究科

 

概要

いまから約18億年前から8億年前の時代は、“退屈な10億年(Boring Billion)”と呼ばれています。その前後の時代には全球凍結現象や酸素濃度上昇現象といった大規模な環境変動の記録が残されているのに対して、この時代は特筆すべき大きな環境変動が認められず、生命進化の観点からも大きな進展がみられないためです。当時の地球環境を特徴づけるもう一つの重要な側面は、大気中の遊離酸素(O2)濃度が現在の数%以下と非常に低濃度であり、海洋内部も無酸素条件にあったと考えられることです。そのような貧/無酸素な地球環境が障壁となって、真核生物の多様化や放散およびそれに続く後生動物の出現が生じなかった可能性が指摘されています。しかしながら、なぜ当時の地球環境がO2に乏しかったのか、その原因については未解明でした。

今回、東邦大学理学部生命圏環境科学科の尾﨑和海講師と東京大学大学院理学系研究科の田近英一教授およびジョージア工科大学の日米合同研究チームは、当時の海洋環境が著しく栄養に枯渇しており光合成によるO2生成が現在の25%程度に抑制されていたことを、地質記録と理論モデルの融合によって初めて明らかにしました。本研究成果は、当時の大気O2濃度が低かったことについて合理的な説明を与えるものです。また、本研究で得られた、「生元素循環の停滞」という新しい知見は、当時の海洋化学環境や気候形成についても新たな制約条件を課すものであり、地球環境と生命の共進化の理解に近づく重要な成果です。本研究成果は、Geobiology 誌の電子版に10月3日に掲載されました。

 

図. 生命(上)、大気中O2濃度(中)、気候(下)の進化シナリオ
黄色でハイライトされた時代は、本研究で対象とした“退屈な10億年”を指す。この時代の前後には全球凍結イベントや酸素濃度上昇イベントといった著しい環境変動が記録されているが、この時代においては気候が比較的安定に保たれていたとされる。また、真核生物と動物の出現は、“退屈な10億年”のそれぞれ前(約20億年前)と後(約6億年前)に生じた。

 

詳細については、東邦大学 のホームページをご覧ください。

―東京大学大学院理学系研究科・理学部 広報室―