重いカルシウムで新しい「魔法数」34を発見
発表者
- 独立行政法人理化学研究所
- 国立大学法人東京大学
概要
理化学研究所(理研、野依良治理事長)と東京大学(濱田純一総長)は、重いカルシウム同位体の研究から、新しい魔法数34を発見しました。これは、理研仁科加速器研究センター(延與秀人センター長)櫻井RI物理研究室のデービッド ステッペンベック 元国際特別研究員(現 東京大学 特任研究員)、武内聡協力研究員らを中心とする国際共同研究グループの成果です。
原子核がとくに安定になる陽子または中性子の数は「魔法数」と呼ばれ、これまでに2、8、20、28、50、82、126が知られています。魔法数は、1949年に提案され、多くの実験データの説明に成功した後、不変のものと考えられ、1963年に魔法数を証明したマイヤーとイェンセンはノーベル賞を受賞しました。しかし、近年の研究から陽子に比べて中性子が非常に多い原子核では、既存の魔法数が魔法数として成り立たなくなることが分かり、2000年には理研の研究グループにより新しい魔法数16が発見されました。これらのことから、従来説が異なる可能性がでてきたため、魔法数研究の重要性が世界的に認識されるようになりました。理論面では、2001年に東京大学の研究グループが、陽子数が魔法数20のカルシウム同位体で、中性子数34が新たな魔法数として出現すると予言しましたが、実験的検証が難しいためこれまで解決されないままでした。
国際共同研究グループは、世界最高性能の理研仁科加速器研究センターの重イオン加速器施設「RIビームファクトリー(RIBF)」を使い、「カルシウム‐54(54Ca)」の中性子数34が魔法数かどうかを調べました。自然界には存在しない54Caを生成するため、亜鉛‐70(70Zn)を大強度で加速し、スカンジウム‐55(55Sc)などの中性子過剰な放射性同位元素(RI)をRIビームとして取り出しました。さらに、55ScのRIビームをベリリウム(Be)標的に照射することで54Caを生成し、その励起準位の測定に成功しました。54Caの励起準位のエネルギーは、周りの原子核に比べて大きく、また理論的に解析したところ中性子数34が魔法数であることを世界で初めて見いだしました。今回、RIBFによる所期のデータの取得はわずか10時間で行うことができ、RIBFが成果創出の高い効率性を持つことを世界に示しました。
カルシウム同位体において中性子数34が魔法数であることを明らかにし、10年来の問題に決着がつきました。今回の成果により、魔法数が現れる新しい規則性や、不安定原子核をも包含する原子核の成り立ちの統一的理解へ向け、大きな一歩を踏み出しました。
詳細について 理化学研究所 のホームページをご覧ください。