2013/9/13(配信日9/10)
刺激によらないGPCR基礎活性の機能を初めて解明
— 嗅覚受容体の基礎活性による嗅神経回路の形成 —
発表者
- 福井大学
- 理化学研究所
- 東京大学
概要
Gタンパク質共役型受容体はヒトでは約800種類存在し、匂い、味、光といった外界の刺激や、ホルモン、神経伝達物質といった内因性の刺激を受容するセンサーとして細胞内に情報を伝達している。これまで、GPCRはそのセンサーとしての役割から、細胞外の刺激物質による活性化と、それによって引き起こされる生命現象を中心として研究が進められてきた。しかしながら、近年の研究からGPCRは外界の刺激がない状況においても低いレベルの活性である基礎活性を持つことが明らかとなり、その生理学的意義の解明に注目が集まっていた。中嶋らは、GPCRの中でも約半数を占める嗅覚受容体ファミリーに着目し、遺伝子改変動物を用いた一連の実験から個々の嗅覚受容体が生み出す基礎活性が、嗅覚神経回路を形成する上で重要な役割を果たすこと見いだした。本研究の成果は、神経回路構築のメカニズムを明らかにするのみならず、GPCRの基礎活性の生理学的機能を明らかにした初めての例であり、今後のGPCRを標的とした研究分野すべてに新たな視点を与えるものである。
本研究は福井大学、東京大学、理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの共同研究として、中嶋 藍(福井大学医学部高次脳機能 学術研究員)、竹内春樹(福井大学医学部高次脳機能 特命准教授)らを中心として行われました注)。今回の研究成果は、2013年9月12日(米国東部時間)発行の米国科学雑誌「Cell」に掲載されます。
詳細について 福井大学 のホームページをご覧ください。
- 注)研究参加者
- 今井猛(理化学研究所発生・再生科学総合研究センター・チームリーダー)、西住裕文(東京大学・大学院理学系研究科・生物化学専攻・助教)、坂野仁(福井大学・医学部・高次脳機能・特命教授/東京大学・名誉教授)