ニュートリノ観測可能な大口径「ハイブリッド型光検出器」の開発に成功
発表者
- 科学技術振興機構
- 浜松ホトニクス株式会社
- 東京大学
概要
JST 研究成果展開事業 先端計測分析技術・機器開発プログラムの一環として、浜松ホトニクス株式会社の久嶋 浩之 電子管事業部 技術部 電子管設計第1グループ グループ長と東京大学の相原 博昭 教授らは、ニュートリノ観測など大型実験施設に用いられる、受光面が直径8インチ(約20cm)の大口径ハイブリッド型光検出器(HPD)の開発に成功しました。
ニュートリノなどの素粒子は、水と反応したときに発する極微弱な光(チェレンコフ光)をとらえることで観測できます。ニュートリノが水と反応する確率を高めるために巨大な水のタンクを用意し、その壁面を多数の超高感度・高精度の光検出器で埋め尽くすことで、精度良く観測できるようになります。こうした条件を備えた大型水チェレンコフ観測装置の光検出器としては、従来、受光面の大きな光電子増倍管(PMT)が用いられていました。しかし光電子増倍管には、光子から変換された電子を増幅するための電極がいくつも組み込まれているため、数10から数100点の部品で構成されることから、量産が難しいという課題がありました。近年、電子管の電子増倍部を光半導体素子に置き替えたハイブリッド型光検出器が開発されました。ハイブリッド型光検出器は量産に向く上に高精度の測定が可能という長所がありますが、感度の高い大口径のものを製造するには設計上の課題がありました(現行のものは、口径が約15mm)。
今回、開発チームは、わずか6点の部品からなる直径8インチの大口径ハイブリッド型光検出器の開発に成功しました。電子管の光電面と半導体素子間に8キロボルトの高電圧をかけることで、従来から使われてきた同口径の光電子増倍管と比較して、1つの光子の測定精度が、エネルギー分解能で約2倍、時間分解能で10倍向上しました。
本成果により、100万トン級の次世代大型水チェレンコフ観測装置用に必要な直径20インチのハイブリッド型光検出器の量産が可能となります。
本成果は、6月3日から京都で開催される「第25回ニュートリノ・宇宙物理国際会議」で展示されます。また、2013年4月に、浜松ホトニクス株式会社から販売を開始する予定です。
詳細について科学技術振興機構のホームページをご覧ください。