2010/8/18

生物に必須な元素「セレン」をタンパク質に正しく取り込む仕組みを解明

- 21番目のアミノ酸と注目される「セレノシステイン」の生合成過程が鍵 -

発表者

  • 横山 茂之(理研生命分子システム基盤研究領域 領域長)
  • 関根 俊一(東京大学大学院理学系研究科 構造生物学社会連携講座 特任准教授)

概要

独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)と国立大学法人東京大学(濱田純一総長)は、あらゆる生物のタンパク質を構成する20種類の基本的なアミノ酸に加えて、「21番目のアミノ酸」と呼ばれるセレノシステイン(Sec)の生合成の仕組みを明らかにしました。 Secの生合成には、リン酸化酵素「O -ホスホセリル-tRNAキナーゼ(PSTK)」による転移RNA(tRNA)のリン酸化が必須ですが、このPSTKがSec専用の転移RNA(tRNASec)を選択的に認識し、リン酸化する機構を解明しました。 これは、理研生命分子システム基盤研究領域の横山茂之領域長(東京大学大学院理学系研究科 構造生物学社会連携講座兼任教授)、東京大学大学院理学系研究科 構造生物学社会連携講座の関根俊一特任准教授(理研生命分子システム基盤研究領域システム研究チーム客員研究員)らによる研究成果です。

セレン(Se)は、私たちヒトを含め幅広い生物の生存に必須の元素です。 反応性が高く一定量以上では有毒ですが、微量成分として不可欠で、Seの欠乏が、がんや高血圧などの疾病と結びつくことが指摘されています。 Seは主にセレノシステイン(Sec)というアミノ酸に取り込まれ、抗酸化作用の機能を持つ酵素など、一部のタンパク質(セレン含有タンパク質)の構成要素として細胞内に存在し、活性酸素種の除去など、酸化還元反応のための活性中心として有効に機能しています。

Secには、このアミノ酸を運搬する専用の転移RNA(tRNASec)が存在し、通常の20種類のアミノ酸と同様に遺伝暗号に従ってセレン含有タンパク質に取り込まれるため、Secは「21番目のアミノ酸」と呼ばれています。 Secは、複数の酵素反応を経てtRNASecと結合(Sec-tRNASec)します。 今回、Secの生合成に必須なリン酸化酵素PSTKとtRNASecとの複合体の結晶構造解析に初めて成功し、生物が反応性や毒性の高いSeを有用なSecというアミノ酸としてタンパク質に正しく取り込む仕組みを解明しました。

詳細について理化学研究所のホームページをご覧ください。