2008/5/30
大きな電気歪(ひずみ)特性を持つ非鉛系物質を発見
- 環境に優しいコンデンサーなどの材料に -
発表者
- 腰原 伸也(東京工業大学フロンティア研究センター 教授)
- 伊藤 満(東京工業大学応用セラミックス研究所 教授)
- 常行 真司(東京大学大学院理学系研究科物理学専攻 教授)
概要
JST基礎研究事業の一環として、東京工業大学フロンティア研究センターの腰原伸也教授らは、同大学応用セラミックス研究所伊藤満教授と東京大学大学院理学系研究科常行真司 授との共同研究で、チタン酸バリウムのカルシウム置換体という鉛を含まない物質で巨大な電気歪(ひずみ)特性(圧電性)(注1)を示す物質を発見しました。
本研究で開発した物質は、従来からよく知られているチタン酸バリウムにカルシウムを添加して結晶化させたものです。チタン酸バリウムは第二次世界大戦中の日本やアメリカ、ドイツでそれぞれ独自に開発された歴史を持つ代表的な強誘電体で、製法の改良により日本のお家芸とも言える物質となり、日本のエレクトロニクス産業の1つの基盤となっています。しかし、カルシウムを含むチタン酸バリウムは、約50年前にその粉末焼結体が日本で開発された後、ほとんど研究されていませんでした。
本プロジェクトは、チタン酸バリウムを改めて新しい観点で研究したところ、広いカルシウム濃度分布でのチタン酸バリウム単結晶化に成功しました。同単結晶が巨大な電気歪特性と誘電率の優れた温度特性を示すことを突き止めました。本研究成果は、アクチュエーター素子材料の非鉛化やコンデンサーなどの改良につながるものと思われます。
本研究成果は、2008年6月6日(米国東部時間)発行(予定)の物理科学専門誌「Physical Review Letters」に受理され、オンライン版で近日中に公開されます。
詳細についてはJSTのホームページをご覧ください。
用語解説
- 電気歪特性(圧電性)
- 外部から電圧を印加することで、物体が歪を発生し変形する特性。また、逆に物体を変形させれば、電圧が発生する。特に、電圧と歪の関係が比例する場合を圧電(ピエゾ)効果と呼ぶ。↑