2008/2/15

東京大学グローバルCOE拠点「理工連携による化学イノベーション」の新企画

- 国際的若手育成のためのレクチャーシッププログラムなど -

発表者

  • 拠点リーダー 中村 栄一(東京大学大学院理学系研究科化学専攻 教授)
  • 副拠点リーダー 相田 卓三(東京大学大学院工学系研究科化学生命工学専攻 教授)
  • 副拠点リーダー 西原 寛(東京大学大学院理学系研究科化学専攻 教授)

概要

本年度(平成19年度夏)からスタートしたグローバルCOEプログラム「理工連携による化学イノベーション」において、日本初の教育研究の新基軸(注1)を打ち出し、特に国際的にトップレベルの若手研究者育成のための方策を実行します。当日は、「第1回GCOE国際シンポジウム 理工連携による化学イノベーション~博士たちの輝くキャリアデザイン~」(英語で発表、討論)を開催しますので、合わせてご参加下さい。

注1:3つの基軸は資料1のI,II,IIIに当たり、22の施策から構成されている。

発表内容

本年度からグローバルCOEプログラムが始まりました。これは先の21世紀COEプログラムの基本的な考え方を継承しつつ、国際的に卓越した教育研究拠点の形成を重点的に支援する文部科学省の事業です。化学・材料科学分野では、東京大学として、理学系と工学系の21世紀COE拠点が発展的に融合したグローバルCOEプログラム「理工連携による化学イノベーション」(拠点リーダー 中村栄一教授)が採択され、昨年夏からスタートしました。

本年度、このグローバルCOE拠点で、21世紀COEで取り組んだ数々の教育研究プログラムに加えて、これまでの日本流の教育研究のやり方を超えた、全く新しい教育研究プログラムの実行とその強力な支援体制の形成を行ってきました。この発表では、それらの新しい施策を披露することによって、我が国における教育研究の国際化の最先端を広く一般の方へも知っていただくとともに、今後の国の教育研究政策の一助となることを期待しています。以下に、新しい施策の1例を紹介します。

化学イノベーションGCOE海外レクチャーシップ賞

趣旨
米国、欧州、アジアの一地域を若手研究者(准教授,講師,助教)が選び、化学及びその関連分野において重要とされている複数の研究組織において講演を行う。具体的には、研究施設における1時間程度の講演、相手先のホスト研究者を含めて5−10人の研究者や学生とのディスカッションを通じて、各自の専門分野での情報交換、当該施設での教育・研究状況、当該国での教育・研究・文化などについて情報を得ると同時に、本GCOEの教育・研究成果を当該国研究者に知らしめる。
背景
米国の若手研究者は、Assistant Professor就任まもない三十歳前半から、年間の相当日数を費やして世界各所で講演し、訪問した場所において様々な分野の研究者と議論を行っている。こうして若いときから幅広い人間関係を築き、批判に曝されることがその後の活躍の要因であることは周知のことである。この経験は、学生やポスドク時の交友関係と並んで極めて重要とされている。講演旅行を通して培われる業績や人物の評判が,テニュア決定時の外部評価の根本にあることは、我が国では余り良く理解されていない。
これに比べ、我が国においては若手が学科に招待されて講演を行い、他学科の教授や研究者と議論するという習慣が全くなく、若手は研究室に閉じこもって研究することが美徳とされてきた。教育経験の薄さに加えて、他流試合経験の薄さ、他分野の研究者との情報交換の欠如が、日本の若手の成長の阻害要因であり、これがまた大学間の人事交流が盛んでない理由ともなっている。世界に目を向けた場合に、国外での講演・交流経験の欠如が決定的に問題であり、将来若手が国際的に活躍し、国際的な認知を受ける可能性を狭めている。本施策によって有為の若手を世界に送り出すことによって、若手の世界的知名度の向上を目指す。なお本施策によって講演旅行をするものには「Chemistry Innovation UT GCOE Lectureship またはlecturer」という称号を用いて講演を行い、経歴などにもその由を掲載する。

記者発表当日(2月15日(金曜日))は10:00-17:30に「第一回グローバルCOE国際シンポジウム~博士たちの輝くキャリアデザイン~」(1st Global COE International Symposium on Chemistry Innovation through Cooperation of Science and Engineering:~Doctors’ Brilliant Career Design~)(東京大学弥生講堂)を開催します。本学博士課程修了者の考え方や体験談を聞くことによって在学生へ指針・助言を与えることが目的で、講演者には日本人ばかりでなく本学に在籍した外国人も半数程度含まれています。講演はすべて英語で行われ、わが国と外国の大学院教育の差異などを知ることも同時に主旨としています。

資料