2007/9/16

日本で初めての天然ダイアモンド発見

発表者

  • 水上 知行(名古屋大学大学院環境学研究科 博士研究員/元東京大学大学院理学系研究科 博士研究員)
  • Simon Wallis (名古屋大学大学院環境学研究科 准教授)
  • 榎並 正樹(名古屋大学大学院環境学研究科 教授)
  • 鍵 裕之(東京大学大学院理学系研究科地殻化学実験施設 准教授)

概要

図1

図1:ダイアモンドを含むCO2流体包有物(注1)の顕微鏡写真

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図2

図2:ダイアモンド鑑定にもちいたラマンスペクトル(注2)の例

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日本で初めて、天然に産するダイアモンドが見つかりました。2年前まで本研究科に所属しておりました水上知行博士(日本学術振興会特別研究員、現在名古屋大学大学院環境学研究科)は、愛媛県での露頭岩石中に天然ダイアモンドが含まれていることを発見しました。採取した岩石を顕微ラマン分光法を用いて分析し、その分光学的特徴からダイアモンドと同定できました。発見された結晶は1ミリメートルの約1000分の1程度のサイズでありますが、これまで日本のような地質環境では産出しないと考えられてきた定説を覆す、画期的発見であります。

ダイアモンドは、通常南アフリカやオーストラリアといった地質学的に古く、非活動的な冷えた(熱活動がおさまった)大陸地域に産しますが、日本列島は活動的で温かく、地質学的に新しい地質からなっており、天然ダイアモンドの産出に関する一般的認識を覆したと言えます。ダイアモンドの存在は、岩石が地下100 km以上の深部から上昇したことを示しています。発見者である名古屋大学の水上博士やサイモン・ウォリス准教授によると、「潜在的な商業価値は評価できないが、この発見の重要性は、日本のようなプレート収束境界において100 km規模の地下から何らかの原因により、地表まで物質がもたらされる事(地質現象)があるということを示した事である」ということです。

この成果は日本地質学会第114回学術大会、ならびに本研究科において開かれた第1回鉱物科学会における緊急討論会によって発表され、原著論文は現在査読中です。

背景説明

一般にダイアモンドは火山岩に伴って産出します。アフリカ南部やシベリア、北米などの代表的な産地はキンバーライトマグマに伴うものであり、10億年を超えるような古い大陸地塊に噴出します。古い大陸は比較的冷たいために、深部のマントルにダイアモンドが安定な条件が広がっていると考えられています。また大陸衝突によって形成されるような、超高圧変成岩中にもダイアモンドの産出の報告があります。今回の日本初のダイアモンドの発見は、火山岩に伴うという形で見つかりました。日本のような活動的で地質学的に若いプレート収束域では、比較的起源の浅い火山岩が卓越し、ダイアモンドの産出には適していないと考えられてきましたが、様々な方面から見直していく必要があると言えます。

重要性

日本列島の基盤構造は古生代(6億年程度)以降、ユーラシア大陸縁に付加した地塊が集積して出来上がっていたものです。このような活動的なプレート沈み込み帯では、高圧下(地下100 km以上;地殻下のマントル内)で生成する天然ダイアモンドの産出は報告されておらず、そのメカニズムの探求は今後の大きな学術的課題です。今回の発見は商業的に産出するようなものではありませんが、この貴重な発見をした場所(露頭)の保護、科学的意義の普及など、これから学会や地域が主体となって活動して行く事が重要であると考えております。

用語解説

流体包有物:
鉱物が成長すると、成長場にあった流体(水や二酸化炭素など)を取り込むように大きくなることはしばしばあります。完全に鉱物の結晶の中にトラップ(捕獲)された流体の存在領域のことを「流体包有物」と言います。これらの流体包有物を分析することによって、岩石学者は鉱物の形成場について貴重な情報を得ることができます。今回のダイアモンドは主として二酸化炭素からなる流体包有物の壁に付着して存在しています。流体包有物を包有しているのは輝石です。
ラマンスペクトル:
ラマン分光法はレーザー光を分析対象に照射し、散乱(ラマン散乱)による光の波長の変化を読み取る手法です。ミクロンスケールの領域から物質固有の情報を取り出すことができ、埋没した微小粒子の同定に有用です。ダイアモンドは波数1332cm-1付近にピークを持つラマンスペクトルが特徴です。図のスペクトルでは二酸化炭素(気体)とダイアモンドのピークが見えています。