2006/11/30

人工DNAを用いて金属イオンの配列をプログラミングする

発表者

  • 塩谷 光彦(東京大学大学院理学系研究科化学専攻 教授)

概要

人工DNA(注1)の二重らせん軸に沿って、2種類の金属イオン3〜10個を精密に配列することに成功した。金属イオンの配列は、人工DNAに導入された人工塩基の配列に正確に対応する。本方法は、金属イオン配列のプログラミングを可能とし、金属イオンの配列に基づく新しいナノ機能の創製につながることが期待される。

解説

図1
図2

これまで、天然のDNAを部分的に化学修飾した人工DNAは、生化学や医薬学的目的に使われたり、機能性分子の材料として注目されてきた。本研究は、水素結合で対を形成する天然型の核酸塩基対を、金属配位結合で対を形成する人工の核酸塩基対に置き換えることにより、DNAの二重鎖内に金属イオンを自在に配列化することを目的としている。以前に、我々のグループで1個から5個までの銅イオンを人工DNAを鋳型として並べられることを報告したが(Science, 2003)、今回は、3個から10個までの2種類の金属イオン(銅イオンと水銀イオン)を同様に並べることに世界に先駆けて成功した。この結果は、複数種の金属イオン結合型人工塩基をDNA上に導入することにより、多種類の金属イオンをその数や順番をコントロールして並べることができる可能性を示した。金属イオンの配列や金属イオン間の相互作用に依存した、ユニークな機能(分子電線、分子磁石、ナノ合金、触媒)の発現が期待され、ナノメートルサイズの機能性分子の次世代の構築原理を提供するものである。

用語解説

人工DNA:
生化学・医薬学的活用、あるいは機能性分子の構築を目的として、天然のDNAを部分的に化学修飾して合成されるDNA。
金属錯体:
金属(イオン)と、金属に結合する無機・有機配位子が結合した分子。

論文情報

Kentaro Tanaka, Guido H. Clever, Yusuke Takezawa, Yasuyuki Yamada, Corinna Kaul, Mitsuhiko Shionoya and Thomas Carell, "Programmable self-assembly of metal ions inside artificial DNA duplexes", Nature Nanotechnology Published online, 26 November 2006