2005/11/29

30年の壁をついに越えた新型触媒の開発

- 分子状酸素によるベンゼンからフェノール直接合成の道を開いた -

発表者

  • 岩澤 康裕(化学専攻 教授)
  • 唯 美津木(化学専攻 助手)
  • ラジャーバル(日本学術振興会 特別研究員)

レニウム-CVD/ゼオライト触媒の構造

概要

フェノールは世界中で毎年7メガトン以上生産されている重要な化学製品である。過去30年間、分子状酸素を使ってのベンゼンからフェノールを直接合成する触媒性能は、転化率(注1)5%、選択性(注2)50%の壁を越える触媒はなかった。我々はそれを遙かに超える新型レニウム触媒を発見した。

解説

これまでフェノールは、まず、ベンゼンからクメンに転換し、クメンをクメンヒドロペルオキシドに転換し、さらに酸により分解してフェノールを得ていた。このプロセスは、多くのエネルギーを必要とし環境への負荷が大きいため、代替が強く望まれている。

今回、我々は分子状酸素によりベンゼンを選択的に酸化してフェノールを合成するレニウム触媒を発見した。これは、過去30年間の触媒の研究の歴史で、誰も成功していなかった。

今回新しく見いだした触媒は驚くほど高い性能を有する。同触媒は、新型構造のレニウムクラスターがゼオライトの細孔内に分散したものである。この触媒は、過去30年間誰も成功しなかった新しい触媒プロセスを切り開く可能性を持つ。

我々は、この触媒がさらに高い活性を得るよう、努力を続けている。

用語解説

転化率:
ベンゼンがどの位生成物に転化されたかの割合(%)
選択性:
ベンゼンから得られる生成物のうちでどの位がフェノールであるかの割合(%)

論文情報

ハイインパクトファクターの Angew. Chem. Int. Ed. (ホットペーパー)に掲載予定。