2005/5/10

RHICにおける「完全な流体」の発見

発表者

  • 浜垣 秀樹(附属原子核科学研究センター 助教授)
  • 小沢 恭一郎(附属原子核科学研究センター 助手)

PHENIX 実験装置

概要

クォーク・グルーオン・プラズマ(QGP)に関して、これまでCERN研究所のSPS加速器での一連の実験で、その実現の兆候が見られたと考えられていたが、決定的な証拠は得られておらず、ましてやその性質に関する知見は皆無であった。2000年に米国ブルックヘブン国立研究所のRHIC重イオン衝突型加速器において、高い衝突エネルギーでの実験研究が開始され、QGP実現の決定的な証拠とQGP状態の物質性質の研究を意図している。この研究のため、日米共同でPHENIX実験という新たな測定器を開発・建設した。既に多くの新しい結果が得られつつある。特に、媒質中でのジェットの振る舞いの研究から高い密度状態実現の証拠は見出されたが、今回、粒子の放出角度分布・運動量分布等、系の集団的な振る舞いの研究から、衝突直後の高温状態における系の時空発展が(粘性が零の)完全流体として記述できることがわかってきた。強い相互作用が支配する系において、このような高温状態で理想的な流体が実現することは、クォークとグルーオンが自由に飛び回る気体状態であろうとのこれまで予想と大きく相反する結果であり、大きな注目を集めつつある。従来の実験室においては実現困難であった極端条件下における物質の性質に関する研究の大きく前進させる成果であり、今後、さらに重要な発見が期待される。

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